「ビートルズとCTスキャン」の意外すぎる関係 マニアがもたらした「現金の山」による無形資産
GAFAの台頭に代表されるように、工場や店舗といった「有形資産」ではなく、データやアルゴリズム、ブランド、研究開発といった「無形資産」の割合が増加している。しかし、無形資産は計測が難しいこともあり、その特徴や経済規模などを十分に把握できていなかった。
ジョナサン・ハスケルとスティアン・ウェストレイクの著書『無形資産が経済を支配する:資本のない資本主義の正体』では、これまで計測できなかった無形資産の全貌を初めて包括的に分析している。無形投資は有形投資と何が違うのだろうか。本書を一部抜粋・編集のうえ、お届けする。
ビートルズがイギリス政府を通貨危機から救った?
無形資産はいろいろ重要な点で有形資産とは違う。すると無形資産に依存する企業は、多くの有形資産を持つ企業とはふるまいが違うことになる。経営者や労働者は別のインセンティブや報酬に直面する。こうした企業の多くは独特な形で機能する。
無形投資が経済学的に見て変わった特徴を示し、こうした特徴を、「4S」としてまとめよう。スケーラブル、サンク、スピルオーバー、シナジーだ。
EMIとCTスキャンの話から、その「4S」について見ていこう。
1960年代半ば、イギリスの人気歌手グループであるビートルズは文化的な影響力にとどまらず、経済的な存在でもあった。その絶頂期に、彼らのレコードやチケット売り上げは今日の価値に換算して、1秒あたり650ドルを生み出していた。ビートルズの海外ツアーからのドル収入は、イギリス政府を通貨危機から一時的に救ったとすらいわれているほどだ。
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