甘いことばかりではない「70歳まで働ける企業」

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甘いことばかりではない「70歳まで働ける企業」

「高齢者を積極的に採用してきたわけではない」。中古厨房機器を再生販売するテンポスバスターズ(本社・東京都大田区)の人事総務部長、實歳美幸さんはこう前置きする。しかし、同社の60歳以上の従業員割合は3割に達し、上場企業では群を抜く高さだ。最高齢は79歳女性、創業以来10年以上働いている。

同社は2005年に定年制を撤廃した。そもそも、創業以来年齢によって賃金や処遇を決めることはしていなかった。「だから、定年もいらない」(實歳さん)。高齢者が活躍する一方で、20歳代の店長も多い。

「3割いるのだから、60歳以上も当然“戦力”でなくてはならない。“お客さん”は一人もいない」(實歳さん)。高齢社員が戦力であり続けるために同社は何をしているか。

一つは評価し、賃金に反映させるることである。同社は金融機関や教員などさまざまな職種から技術や経験を持った高齢者を採用している。若い会社ゆえ、彼らは即戦力となる。たとえば営業の場合、年齢に関係なくその人の稼ぎ出した粗利などを基に3カ月置きに賃金を見直す。

また、同社には商品管理など補助的な職場で60歳以上を採用する「パラダイスシステム」があるが、これによって入社した人は、一律各地域の最低賃金でスタートする。しかし、その一方で年2回の賞与はその貢献度に応じた格差が出るように支給され、店長の推薦状でさらに増額されることもある。

もう一つが研修(同社では「幸齢者研修」と呼ぶ)で、年5回計150人の60歳以上従業員が参加する。これは技術やノウハウの研修ではなく、自分がいかに“戦力”であり続けられるか、モチベーション向上や仕事改善策に力点が置かれている。

60歳以上の従業員比率が高まったここ数年、ほぼ一貫して業績を伸ばしており、営業利益率も5%台と業界水準を大きく上回る。3割を占める高齢社員の貢献度は小さくない。

一方で、「健康・身体面でのケアや賃金・人事制度での改善余地はまだまだある」(實歳さん)ともいう。利益を追求しながら高齢者の働く場を提供し続けられるか。その制度設計での試行錯誤は続く。

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