甘いことばかりではない「70歳まで働ける企業」

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及び腰の大企業

少子高齢化の進行と厚生年金の受給開始年齢引き上げを背景に、高齢者を新たな労働力供給源として位置づける動きが官民で広がっている。現在、全人口に占める65歳以上の割合である高齢化率は22%を超え、50年には40%近くに達する見込みだ。今後は「65歳定年」への社会的要請も高まってこよう。さらに、政府は「70歳まで働ける企業」へ向けた高齢者雇用施策強化を推進している。

06年施行の改正高年齢者雇用安定法では、65歳まで従業員の雇用を確保する措置を講じることを企業に義務づけている。現在は移行期だが、年金の支給開始年齢の引き上げにスライドする形で、10年3月末までが63歳、13年3月末までが64歳、同年4月以降は65歳と段階的に引き上げられる。

また、この措置は、(1)定年引き上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年制の廃止のいずれかで選択できるが、全体の85%が賃金や雇用条件などで柔軟な対応が認められる継続雇用制度を採用している。政府は65歳以上定年企業の割合を10年度までに50%、70歳まで働ける企業の割合を同20%とする目標を掲げている。

一方、企業にとってシニア社員を雇用することへの経営上の負担感は強い。高齢者雇用に積極的でこれをテーマとした講演会にもよく招かれるある企業の社長によれば、参加者からの質問でいちばん多いのが「60歳で辞めてほしい社員をどうすれば辞めさせられるか」だという。

もっとも、雇用過剰感が強い大企業と人手不足に悩む中小企業とでは高齢者雇用に対するスタンスが大きく異なる。法改正から3年が過ぎたが、厚生労働省の調査によれば、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は、中小企業では47%に達しているのに対し、従業員数300人以上の大規模企業に限ると24%と半減する。今後は高い技術がある層を中心に、大企業から中小企業への雇用シフトも想定される。

腰掛け雇用に限界

今後60歳以上従業員割合の増大に伴い、企業はシニア社員だけでなく全社的な人事・給与制度の見直しを迫られるだろう。最も問題となるのが賃金である。再雇用された場合の賃金では全体では「定年時の6~7割」が過半数となるが、大企業に絞ると「同4~5割」が最多だ(高齢・障害者雇用支援機構調べ)。

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