「耐久性」で需要を開拓する日野自動車、カギは独自販売網の整備《中国を攻める》
日系メーカーのトラックは、現地製に比べて値段が2~3倍ほど張る。そのため、中国現地での需要は資金に余裕のある日系企業の現地法人や、コンクリートミキサー車などの一部の用途に限られていた。
そうした中で、日野は07年に広州汽車と、合弁会社の広汽日野を立ち上げ、09年9月に生産ラインをスタートさせた。03年に設立した上海日野エンジンから現地生産のエンジンを調達しているため、現地調達率は85%に及ぶ。
「価格は日本製トラックの約半分、中国車に比べても3割高いだけに押さえている。その一方で、耐久性は現地メーカーの2~3倍あるようなトラックを目指してきた」(市川副社長)。
中国の現地調達率85%は、インドネシアをはじめとする他の拠点が40%を切っているのと比べると、突出している。09年度の年産計画は600台だが、10年度には3000台とし、収支トントンを目指す。将来は2万台まで拡大する予定だ。
日野が中国で生産する車型は後ろに貨車を連結する大型トレーラー車が主だ。大型トレーラー車の需要は、都市部と都市部を結ぶ幹線道路を走る長距離輸送用が大半。中国も、日本と同様に過積載への法規制が厳しいため、アスファルトの上を安定走行できる、燃費性能のよいトラックが求められる。価格の割に耐久性が高い点を売りにしたトラックで市場シェアの向上を狙う。
さらに日野の海外展開の大きな特徴は、自前の「3S(スリーエス)体制」と呼ばれる販売拠点網の整備だ。3Sとはセールス、サービス、スペアパーツの頭文字。自家用に使われることも多い小型トラックとは異なり、大型トラックの用途は商用に限られる。整備不良や補修品不足でトラックが動かなくなればそのまま損失につながるため、高い稼働率を維持することが最も重要になってくる。