「耐久性」で需要を開拓する日野自動車、カギは独自販売網の整備《中国を攻める》
天然資源の豊富なインドネシアは今、石炭の採掘量拡大など、空前の開発ブームに沸いている。日野自動車はこの需要に乗り、トラックの販売台数を伸ばしてきた。インドネシアは2009年度に1・4万台を見込む海外最大の販売先だ。
販売しているのは、日本で売っているトラックとはまったく異なるもの。日野はインドネシアで、山奥の露天掘り現場に入ったり、パームオイルを過積載したりしても大丈夫なように、車体の強度を大幅に高めた車種を販売している。たとえば大型の車体に、中型の運転席を載せたトラックがインドネシアの現地ニーズ。小型トラックでも、昨年末に足回りを大幅に強化した新モデルを投入したところ、この3月、4月は月3000台の注文が殺到した。
日野のメインマーケットである国内市場では、あくまでアスファルト舗装された良好な道路が前提。乗用車メーカーと同様、乗り心地や燃費を追求してきた。一方で、インドネシアをはじめとする新興国の道路事情はまったく違う。大都市を一歩離れれば、平坦な道や舗装道路はほとんどなく、土ボコリの舞う地面が道となる。当然、平らな道を走るトラックと山道を走るトラックでは、仕様が違う。「ここ数年間はそうやって現地に適したトラックを投入することで販売台数を伸ばしてきた」(市川正和副社長)。
日野は日本国内で30年以上、大型トラック(積載量6・5トン以上)、中型トラック(同3~6・5トン)の合計販売台数でトップシェアを誇る。しかし、国内の大型、中型トラックの市場規模は、1990年の19・2万台をピークに減少。07年度には10万台を割り、09年度は4万台程度まで縮小している。こうした中で、いすゞ自動車、三菱ふそう、UDトラックス(旧日産ディーゼル)などは、海外展開を強化してきた。
それに対し、国内で稼ぐことができていた日野は海外強化へ舵を切るのが遅れた。そのため、ほとんどの国では、すでに欧米競合メーカーのほか、国内他社が進出済みだ。競合他社の多くは、現地のニーズに適合させた低価格車を軸に展開しているが、日野は差別化のために価格の割には品質の高いトラックを販売することで、食い込みを図った。