「水素」「EV」で急速に国策が動き出したワケ 橘川教授が語る「日本版脱炭素化の見取り図」

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――CCSは容易ではない?

世界を見ても、CCSを商用稼働しているのはアメリカ、オーストラリア、ノルウェイだけだ。海外では、枯渇してきた油田にCO2を押し込んで、その圧力で石油を取り出す形で利用されることが多い。石油生産の経済性を増すため、CO2は「商品」となっている。だが原油価格が一定以下に下落すると、不採算になるため、将来的な持続可能性は不明だ。

スウェーデンとノルウェイのエネルギー会社が主導するオランダの水素火力発電は2025年の稼働を予定し、既存の天然ガス火力発電から水素へ転換するものだ。天然ガスから水素を作るときに発生するCO2は、船舶でノルウェイへ送り、同国でCCSを行う方法が計画されている。ちなみにこの水素火力発電のタービンは三菱パワー製だ。日本勢はこうしたプロジェクトも参考にして、日本向けの構想を練っている。

水素社会は水素とアンモニアのすみ分けに

――政府の発表や報道では、「水素」という言葉が使われており、一般の人たちはアンモニアと水素の違いなどで頭が混乱しやすいと思います。全体を整理すると、どうなりますか。

水素と空気中の窒素を合成すればアンモニアができるし、アンモニアを水素化することもできる。水素とアンモニアが近い関係にあることは事実だ。

ただし、経済産業省の中にも、燃料電池自動車(FCV)などを念頭に水素を中心に考えるグループと、電力を念頭にアンモニアを中心に考えるグループに分かれているようだ。水素とアンモニアをまとめて「水素社会」と呼んでごまかしているところはある。だが、当面はそれでもあまりまずいことにはならないだろう。

おおざっぱに言うと、日本の電力業界はみんなアンモニアによる火力発電へ突き進んでいる。アンモニアは毒性(強い刺激性)があり、コンシューマ用途には向かないが、工業や肥料用などで長年使用されてきたため、発電所や工場などではハンドリングしやすい。

一方、水素にはFCVに代表される自動車分野や家庭用のエネファームなどの用途があるが、貯蔵・運搬面で技術的課題がある。運搬方法では大きく2つの候補があり、1つはマイナス253℃まで水素を冷却して液化する方法、もう1つは水素にトルエンを混ぜてメチルシクロヘキサン(MCH)にして輸送・貯蔵する方法だ。MCHなら普通のコンテナで運ぶことができ、低コストだが、最後に水素を分離する際に約400℃の熱を加える必要がある。液体水素、MCHともに冷却や加熱によるコストの課題などを抱える。

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