アメリカの映画館「倒産続出」は避けられない訳 ワーナーがついに開けた「パンドラの箱」の衝撃
もちろんワーナーには彼らなりの言い分がある。Netflixやアマゾンプライムなど配信サービスが劇場ビジネスを脅かすのは、コロナ前から起きていたこと。
ハリウッド市場の3分の1を握るディズニーもそれに対応すべく20世紀フォックスを買収し、自社の配信サービスのコンテンツを充実させている。そこへコロナが起こり、ハリウッドが新作の公開をやめて、人々は家で映画を楽しむことにますます慣れてしまった。
AMCが言うように、コロナが収束した時、人々は大喜びで劇場にやってくるかもしれない。だが、それと同じくらい「映画は家で見ればいい」と思う人もいるだろう。監督のロン・ハワードも、最近の筆者とのインタビューで、「今、人は、自分が見たい時に見たいものを見たいのだ」と述べている。
今後映画館が再開しても、家のテレビも昔よりずっと大画面になった今、わざわざ指定された上映時間を狙って出かけ、駐車場代を払い、予告編を見せられて後にようやく本編を見るという面倒くさいことを避けたいと思う人も少なくない。
ワーナーは「劇場主の利益」を無視している
この決断で、HBO Maxが会員数を大きく増やすことは確実だ。それこそが彼らの悲願である。今年5月末にスタートしたHBO Maxは、会員獲得に苦戦してきた。NetflixとDisney+は、それぞれ7300万人の会員数を誇るが、後発のHBO Maxはたった860万人。
しかも、何もないところからこれだけの数を獲得したNetflixやDisney+と違い、HBO MaxはプレミアムケーブルチャンネルHBOの延長版であり、そこから無料のアップグレードをした会員が多い。
だから、Disney+のような月7ドルという低価格にすることができず、HBOの従来の値段である月15ドルから変えられないでいる。また、コロナの影響からHBO Maxオリジナル作品の制作にまで支障が出てしまっている。
家計から配信に出せる予算が決まっている中、NetflixやDisney+に加えてもっと高いお金を払うだけの大きな魅力を持たないHBO Maxだったが、これからほぼ毎月のようにワーナー・ブラザースの新作映画を家で見られるとなれば話は違う。ワーナーも、新作映画があるならオリジナルコンテンツの製作が多少滞っても大丈夫だ。
「2021年だけの限定措置」というのは劇場主の手前で言っていることだ。劇場主もそれをわかっているからこそ、怒らずにはいられないのである。
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