「調整後法人税」トップ20&ボトム20 「会計上の税金額」首位はトヨタ、最下位はマツダ

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マツダには好調持続のお墨付き

ただし繰延税金資産として計上するには、その後は会社が利益を出せることが条件となる。利益を出さない限り課税ができず、法人税を減らすことができないからだ。その判定は監査法人が担う。繰延税金資産を積み増せたということは、過去に赤字などに苦しんだものの、これからは利益を出せるという監査法人のお墨付きに値する。

たとえば、最も調整後法人税額の少ないマツダ。2012年3月期は営業利益段階から赤字となった。翌期は黒字転換したとはいえ、営業利益539億円、純利益343億円と伸び悩んだため、監査法人は繰延税金資産を一部しか認めなかった。

ところが、直近2014年3月期は営業利益で1821億円に達し、次期には2100億円に伸びるという会社予想も提示された。好調な業績持続が見込まれ、439億円の繰延税金資産の積み増しが監査法人から認められたことも、1356億円の過去最高益達成に大きく寄与するところとなった。

法人税減税が純利益にマイナスとなることも

繰延税金資産には注意しなくてはならない側面もある。資産として計上を認められる金額は、将来に企業が支払う法人税の額に依存するので、法人税率が変わると変化してしまうのだ。法人税率が下がれば、その分将来に払う金額が減ることになり、計上できる繰延税金資産も減ってしまう。こうした場合は、いったん認められた繰延税金資産を取り崩す必要が生じ、税率が下がった期の純利益を押し下げる要因になってしまう。

法人税減税はすべての企業の純利益にプラスになるというイメージがあるが、このように思いがけないマイナス面があるということも、注意が必要だ。

企業の純利益は、調整後の法人税額によって大きく増減する。前期は繰延税金資産の積み増しも寄与して、過去最高の純利益を達成した企業もある。しかし、「ゲタを履いた」格好の税効果による調整という過去最高益をもって、業績が好調だと断言できない面もある。本当に業績が好調だと言えるのは、きちんと税負担した上での利益でも、過去最高の純利益を上げ続けることであろう。

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田中 久貴 東洋経済データ事業局

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たなか ひさたか / Hisataka Tanaka

2013年東洋経済新報社入社。主に上場企業の財務データの収集・編集にかかわった後、現在はデータベース営業部で、各種データ商品の販売を行う。

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