「バイデン政権」で警戒すべき経済リスクとは 白井元日銀審議委員が挙げる4つの注目点

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第2のリスクは、過大評価となった株価の急落である。アメリカの株価はコロナ禍が深刻化した3月に暴落したが、空前の財政出動と金融緩和政策を受けて急反発に転じた。コロナ前から割高だった主要指数は予想以上の速さで進むワクチン開発と緊急接種のニュースに大きく反応して再び史上最高値を更新しており、PER(株価収益率)などの指標を見ても歴史的な高水準にある。

白井 さゆり(しらい さゆり)/1963年生まれ。1989年慶応義塾大学大学院修了。1993年コロンビア大学大学院博士課程修了(経済学博士)。国際通貨基金エコノミストなどを経て2006年に慶応義塾大教授。2011年4月~2016年3月に日本銀行政策委員会審議委員。2016年9月から現職(写真:本人提供)

「バイデン氏は株価高騰が一因となっている所得格差の拡大や、金融と実体経済との異常な乖離を是正しようとしている。そのために個人の最高税率の引き上げや高所得層の所得控除の減額、キャピタルゲインや配当への課税引き上げなどを公約している」

「所得格差の大きさを考えれば、累進課税の強化は必要だ。バイデン氏は累進課税を強化して、最低賃金の引き上げや学生ローンの一部免除などに充てようとしているわけだが、法人税の増税を含めそうした増税が実行されれば割高な株価が大きく下がる可能性があり、どこまで株暴落を無視して断行できるかが課題になる」と白井氏は見る。

また、「バイデン氏は行きすぎた金融セクターの膨張を気にしており、金融規制を強化すると言っている。オバマ政権でボルカールール(銀行の自己勘定取引規制)ができ、トランプ政権で少し緩和されたが、バイデン氏は再強化を検討中だ。銀行のレバレッジ規制(資本要件)の強化も含め、何らかの金融規制が強化される可能性は高く、それも株価にマイナス材料となる」。

保護主義的な産業政策の落とし穴

第3のリスクは、「バイ・アメリカン」政策を実行するうえで、対中政策がどうなるかという問題だ。

バイデン氏はアメリカ企業の海外子会社が稼ぐ利益に対する増税のほか、海外で生産した製品を国内で販売する際の税率引き上げを公約に掲げている。そして、4000億ドルをアメリカ製品の政府調達に充て、3000億ドルをイノベーションの研究開発に使う方針。要するに、アメリカ国内での生産を増やして製造業を復活させることに狙いがある。

一方でバイデン氏は、オバマ政権が推進し、トランプ政権が離脱したTPP(環太平洋経済連携協定)について、賛成とも反対とも明言せず、まずは国内の製造業の競争力強化が大事だと述べている。

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