「バイデン政権」で警戒すべき経済リスクとは 白井元日銀審議委員が挙げる4つの注目点

拡大
縮小

「バイデン政権や民主党はTPPに参加する前提として、アメリカの労働者や環境にとって不利にならないように条件面で再交渉する姿勢だ。アメリカのTPP早期参加がないとすると、その間に中国の国際的な存在感と影響力が一段と大きくなるだろう」と白井氏は話す。

中国はアメリカが保護貿易主義の傾向を強める中で自由貿易主義を推進し、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に署名したうえ、TPPへの参加にも習近平国家主席自身が前向きな姿勢を示している。世界の貿易に占めるシェアも拡大が続き、日本などを大きく引き離している。「アメリカが国内の製造業を守ると言っている間に、ますます世界における中国の台頭を許すことになる」。

しかも、アメリカの貿易赤字はコロナ前より拡大しており、対中国でも赤字が大きくなっている状況。トランプ政権の制裁関税は効果を上げたとはいえない。

「こうした中でバイデン政権が、どういう対中政策をやるのかが問われている。アメリカ企業としても今や、巨大化した中国経済を無視して儲けることはできない。バイデン氏はトランプ政権のような制裁関税は行わないと言っているが、実際どこまで強硬な姿勢をとるのか。非常に難しい判断を迫られることになろう」

忍び寄るインフレと金利上昇の懸念

第4のリスクが、長期金利の上昇である。アメリカの10年物国債利回りは2018年秋の3.2%台をピークに下降に転じ、コロナ禍で一時0.5%台まで急低下。ただ足元では0.9%台まで戻してきている。

金利反転上昇の要因としては、ワクチン開発によるコロナ禍の早期収束期待とともに、民主党政権下での財政赤字拡大観測もある。バイデン氏は増税以上の財政支出を想定しており、財政赤字が拡大するのは明らかだ。

「最低賃金を引き上げたり、学生ローンを緩和したりすれば、低所得層の消費意欲は旺盛なので、個人消費が拡大する。また、気候変動対策としてインフラ投資などを4年間で2兆ドルも行うと言っている。それが設備投資を増やし、消費も増やす。結果的に経済成長期待とともにインフレ圧力が高まり、財政赤字の拡大観測も相まって長期金利は上がりやすくなる」と白井氏は読む。

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