ANAが推し進める、CA大量採用の勝算 国際線輸送力トップ奪取の余勢を駆る

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直近の大量採用は正社員化したうえでの話だ。また同じ年度にCAの中途採用を2回も行うというのは、少なくとも過去5年間にはなかった。つまり、今のANAはそれだけ強気に動いているということだ。背景には、ここ数年で国際線ビジネスを一気に広げる計画と、ANAがすでに得ている成果がある。

同社は2月に発表した中期経営計画で、最終年度にあたる2016年度に国際線収入を5485億円と、3年間で45%も増やす計画をブチ上げた。この春、羽田空港の国際線発着枠の大幅拡大により、ANAの羽田発着国際線は従来の10路線13便から17路線23便に増えた。

今年4月、国際線の輸送能力で初めてANAがJALを抜いた

今回の羽田国際線の発着枠拡大は、従来のようなライバルの日本航空(JAL)との折半による割り当てではなく、JALの5枠に対してANAは11枠を獲得。

その結果、ANAグループの国際線の座席数と運航距離を掛け合わせた輸送能力は、4月に40億座席キロ・メートルを超え、前年同月比で3割近く増えた。しかも、38億座席キロ・メートル台のJALを月次ベースで初めて上回ったのだ。

ANAはこの勢いに乗って、今後は成田空港を軸に国際線のネットワークを拡大していく方針で、JALが就航していない国・地域への就航も模索している。東南アジアが有力だ。その要員を確保するために、CAを大量採用する。

旅客数ではまだJALが先行

とはいえ、国際線ではJALに一日の長がある。4月の国際線旅客数はANAの55万0975人に対し、JALは60万7441人。輸送能力ではJALを上回っているものの、実際に搭乗している旅客数でも差を埋め、逆転できなければ、ANAのもくろむような収益拡大には結び付かない。

「過去4年でANAは国際線の収入を約4割増やしてきたが、これには破綻したJALが落とした需要を取り込んだ側面もある」(金融機関幹部)という指摘もある。国際線には、たとえばテロや伝染病、金融危機などのイベントリスクがつねにあり、輸送能力に比例してリスクは大きくなる。

それでも、収益拡大に奔走するANA。急成長するアジアの旅客をどれだけ呼び込めるかが、カギとなりそうだ。

(撮影:尾形文繁)

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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