ドコモ、激安料金で挑む「一人負け」からの脱却 携帯契約数は3四半期連続で純減が続く

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ソフトバンクの強さの裏には、ワイモバイルの存在がある。2015年にソフトバンクモバイル(当時)が吸収合併して以来、マルチブランド戦略で先行し若年層を中心にドコモやauから顧客を取り込みつつ、主力のソフトバンクブランドへの誘引を進めた。その結果、ソフトバンクは「LINEモバイル」も含め、展開する3ブランドすべてで契約数を伸ばし続けている。

若者を意識した新料金プランを発表したドコモだが、値下げはこれで終わらない(撮影:大澤誠)

これを追ったのがKDDIで、2020年10月にUQモバイルを統合。auの店舗でもUQを提案できるようになったり、転出手数料がなくなったりしたことで、同月のUQからauへの送客数は前年同月比3.5倍となった。「ソフトバンクの伸びにはワイモバイルからのアップセル(高価格帯プランへの送客)が相当効いている。われわれも同じことを狙っている」(KDDI幹部)。

ドコモの井伊社長は会見で高価格帯のプランへの送客などについて言及しなかったが、当然同社も低価格プランで若年層を囲い込み、将来的に5G需要や家族割などをテコに大容量プランへの誘引を進めるだろう。

値下げ影響をどう補うのか

さらにドコモは既存の大容量プラン「ギガホ」や従量制プラン「ギガライト」でも値下げを検討していることを明らかにした。12月中にも詳細を発表する。通信量の少ない顧客向けには、MVNOと連携したプランも検討するという。すべての価格帯で値下げを進める見込みだ。アハモを皮切りにドコモの“価格破壊”が進めば、顧客を奪われまいとする通信各社は戦略の練り直しを迫られそうだ。

攻勢に打って出るものの、値下げは大きな減収要因となる。井伊社長は「(収益面で通信業界の)3番手からトップに返り咲きたい。料金を下げれば通信料収入は減るが、非通信の付加価値サービスでどう埋めるかを考えるのが経営者としての責任。減収を宣言したわけじゃない」と話す。今後は料金だけでなくサービス面でも差別化できるかが焦点となる。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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