「すべての価値ある記事は有料であるべき」 WSJ編集局長が語るデジタル時代の戦い方(上)

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――ソーシャルメディアを利用するうえで難しい点は。

WSJにとって特に難しいのは、ほとんどの記事が有料であることだ。私は9300人のフォロワーに対して毎日記事のリンクを含めたツイートをしているが、このうちWSJの購読者は一部に過ぎない。

購読者でなくても、2~3つほど無料で記事を読むことはできるが、それ以上読むには「ペイウォール(有料の壁)」にぶつかる。これは私たちにとって挑戦であるが、チャンスでもある。私たちが提供しているコンテンツの価値が高くて、購読意欲をくすぐるようなものであれば、購読者になってもらえるはずだ。

――現状、WSJは記事のバラ売りをしていませんが、今後たとえば読者が読みたい記事だけおカネを払って読めるようにする考えは。

バラ売りモデルを検証したことはあるが、今のところ私たちはそれとは違う課金モデルを目指している。ただし、ほかの課金モデルについても、コンスタントに検証はしている。

現在のところWSJは、定期購読すればすべてのコンテンツにアクセスできるという、非常にシンプルな課金モデルを採用している。ただし、ニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズなど、ほかの新聞のモデルの課金モデルについても研究している。また、WSJは記事の一部を無料配信しているが、どういう記事を無料にし、どういう記事を有料にするか、という点についても常に見直している。

ハイテク記事に力を入れる

Gerard Baker●オックスフォード大卒。英イングランド銀行(中央銀行)のアナリストなどを経て、1994年英フィナンシャル・タイムス(FT)入社。94~96年は東京支局長として日本の金融危機を取材。ワシントン支局長などを経て、2002年に主席米国論説委員。09年WSJ入社。13年1月から現職。

――多くのメディアは定期購読型にするか、広告収入型にするか、記事のバラ売り型にするか、考えあぐねていると思います。どういったコンテンツであれば、WSJのような定期購読型で成功できるのでしょうか。

私の考えでは、すべての記事は有料であるべきだ。ほとんどのジャーナリスティックなコンテンツは制作するのにおカネもかかっているし、価値も高い。読者がこうした質の高いコンテンツを求めるのであれば、課金は避けられない。

ただ、私たちも一部の記事は無料配信している。今のところ基本方針は、どこでも読めそうな一般的な記事は無料配信し、WSJが圧倒的な強みを持つビジネス、金融、経済といった記事については有料で提供するようにしている。 

――デジタル版での新たな挑戦といえば、今年の1月からハイテク関連に特化した「WSJD」を始めました。これに先駆けて、「Digits(ディジッツ)」というハイテク関連もブログも展開しています。

WSJDを始めるにあたって、ハイテク分野の報道量を大幅に増やした。WSJには世界にインパクトを与えるテクノロジー報道をする力があると信じているからだ。ブログはそのハイテク報道強化の一環。

TechCrunch(テッククランチ)やGizmode(ギズモード)など、ハイテク系のブログは多いが、まだまだこの分野には成長の余地がある。たとえば、ガジェットの品評などにおいても、WSJのブランドや報道の正確性などは、ほかにはない強みだと思っている。

(撮影:梅谷秀司)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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