イタリア人が「再ロックダウン」を望んだワケ 「休業中のシェフたち」が助け合ってやったこと

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この措置は12月3日まで有効だが、それ以前でも感染状況を見て、規制レベルは随時変更になった。例えばトスカーナ州(州都フィレンツェ)は最初はイエローだったのだが、感染が急激に拡大したためオレンジへ、そしてレッドへと変更になった。

規制に対して反対の声が各方面から上がりデモや暴動がイタリア各地で起きた。規制によって大打撃を受けたレストラン業界の団体がまじめに訴える一方で、反対するために反対しているようなグループがパフォーマンス的に集会をするなどして、一時物騒な雰囲気が立ち込めた。だが全体的にイタリアの人たちは、意外なほどきちんとマスクをし、規制を守っていたという印象だ。

第1波の恐怖が身にしみたのか、間近に迫るクリスマスをなんとか楽しく祝いたい一心なのか、感染対策を守った。国民の80%がカトリックと言われるイタリアでは、クリスマスは宗教的にとても大切なイベントでもあり、同時に家族と一緒に祝って過ごす大事な時間だからだ。

「さっさとロックダウンしたほうがいい」

ロックダウンに入る前の、感染が拡大しつつあった頃、何人ものイタリア人たちが「夜の外出規制とか、甘いことやってないで、さっさとロックダウンにして感染を抑えたほうがいい。そうでないとクリスマスに間に合わない」と言うのを聞いた。第1波のときには、あれほどステイホームを嫌がっていたのにだ。もちろんそこには家族で祝いたいという想いだけでなく、クリスマスに動くはずの大きな市場の流れで、コロナで疲弊しきったイタリア経済を活性化させたいという、祈るような気持ちもあっただろう。

そんな甲斐あってか、11月20日頃から感染拡大のカーブは緩やかになり始め、イタリア全国のRt(実行再生産数)も最盛期の1.7(ロンバルディア州やピエモンテ州などに限って言えば2を超えていた)が1.08まで下がった(11月27日時点)。そして11月29日からは今までレッドゾーンだったピエモンテ州、ロンバルディア州、カラブリア州がオレンジゾーンに変更になった。

ロックダウン中のトリノで目立つデリバリーのライダーたち。 低賃金で働くライダーたちが、レストランの近くでオーダーが入るのを待っている。11月10日、トリノのカステッロ広場前にて(筆者撮影)

マスクをして密を避け、手洗いをするという基本を守ってさえいれば、ショッピングに行く、散歩に行くなどは理由がなくても自由になった。とはいえ居住地の市から外への出入り禁止は続くので、例えば私は住所がトリノ市だから、中心街まで11キロの距離に住んでいても出かけて行くことができるが、市が違えばほんの500m先でも行くことができない。

一方でトスカーナ州、ヴァッレ・ダオスタ州、カンパーニャ州(州都ナポリ)などはレッドゾーンのままとなった。12月3日には現在の法令が終了し、イタリア全土がイエローゾーンとなるという予想もある一方で、Rtが1を切らない限りは感染はまだ増えるということだから、外食やスキーバカンスはまだ解禁できないという厳しい見方もある。とはいえ、確実にいい方向に向かっている。

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