8月6日、イタリアでは「グリーンパス」、いわゆる「ワクチンパスポート」の提示義務が始まった。義務化の是非をめぐる議論や反対運動が盛んに行われていたにもかかわらず、政府は各方面の反対を押し切り法制化に踏み切ったのだ。12歳以上なら誰でも、グリーンパスがなければレストランやバール、映画館、美術館、ジムなどが利用できない、飛行機にも乗れない、コンサートやサッカー観戦にも行けない。そんな日々が始まった。
その日の朝、私は毎年夏を過ごしている北イタリアはリグーリア州の小さな海の町で、2年ぶりのバカンスを過ごしていた。去年はコロナ第1波が去ったばかりで、夏には感染者数が減っていたとはいえ、「海なんて、ビーチや水の中でどんなふうに感染するのかしないのか、わからないから恐ろしい」と家でおとなしくしていた。だから2年ぶりのバカンスだ。
普段なら夏休みは海外で、という人たちも、コロナ禍の今は国内で過ごそうと考えるケースが多いのは世界共通だろう。イタリアでは特にコロナが蔓延し始めた初期、海外へ出かけたら急に感染が拡大して帰国できなくなった人がたくさんいた。今年6月にも、夏休みが始まったばかりの高校生や大学生たちが、イタリアから近いマルタやギリシャへ出かけて行って陽性者が続出。2週間隔離されて帰国できない、滞在費用は親持ちで大変だ、と大きく報道されていた。そんな轍は誰だって踏みたくない。
多くのイタリア人がマスクを着用
そんな人たちがいっぺんにやってきて、小さな海の町の中心地はマスクをしないで歩くのは恐いほどごった返している。私はおもわず息を止め、バッグの中からマスクを取り出して装着し、急いで通り過ぎた。
イタリアでは6月28日から屋外でのマスク着用義務が解除になってはいるものの、密がある場所、必要な距離が取れない場合はその限りではないということになっている。私だけでなく、驚くほど多くのイタリア人たちが、この暑い夏にちゃんとマスクをつけている。イタリア人がちゃんとマスクをするなんて意外、と言った私に、「イタリアはあれだけどんどん人が亡くなって、とても怖い思いをしたんだから当然じゃないの?」と言ったイタリア人の友人の言葉を思い出す。
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