広がる自転車通勤、環境と健康に貢献だが意外なリスクも潜む
「メタボ対策に」「エコだから」。書籍やテレビで取り上げられ、ここ数年の間に自転車による通勤人口は確実に増えた。自宅から最寄り駅までといった限定的な利用ではなく、自宅から勤務先まで、数キロメートル~十数キロメートルを自転車で通う。東京の大手町や丸の内でも、スーツにリュックを背負って軽快に走るビジネスマンの姿を朝夕見掛ける。
環境省の肝いりで2009年度に1・35億円の予算も組まれた「EST、モビリティマネジメントによる環境に優しい交通の推進」事業にも「エコ通勤」の項目があり、その中に「自転車利用促進実験」も含まれている。今や国を挙げて自転車通勤が推奨される時代だ。
地方自治体でも、07年ごろから通勤時間帯の渋滞緩和とCO2削減を目的に、公共交通機関の利用や自転車通勤に切り替えるよう指導するところが増えている。
実際、CO2削減効果はある。早くからエコ通勤に取り組んでいるデンソーの試算によると年間24トン、去年始めたばかりの富士通アイソテックでもおおむね5・4トンのCO2削減につながったという。
ガソリン代支給額は削減できるが、公共交通機関に切り替えた人の運賃のほうが高くつくこともあり、必ずしもコスト削減にはつながらないが、CO2削減とメタボ防止=医療費削減の一石二鳥といえそうだ。だが、一見いいことずくめに見えてもリスクは潜んでいる。
未整備な道路環境
自転車専用レーンの未整備は周知の事実だ。国内の自転車が通行できる道路のうち自転車道が整備されているのはたった0・2%。08年から全国98カ所で、自転車走行環境モデル事業として試験的に自転車専用車線が設置されてはいる。都内では江東区と渋谷区の2カ所だが、いずれも400メートル、1・2キロメートルとまだまだ序の口。本格的な自転車専用道整備には10年単位の時間がかかりそうだ。