広がる自転車通勤、環境と健康に貢献だが意外なリスクも潜む
免許制度があり、最低限のルールとマナーを身に付けている自動車の運転と異なり、自転車に関しては、規則どころか基本的なマナーすら知られていない。自転車購入時に簡単なパンフレットを渡されるが、これをきちんと読んで理解し実践している乗り手がいったいどのくらいいるのだろうか。
よく見掛ける車道の逆走や無灯火は、明らかな道交法違反だし、緊急時以外にベルを鳴らすと罰金を取られることもある。さらに、携帯電話や携帯音楽プレーヤーを操作しながらや、傘を差しながらの片手運転は、懲役刑になることもある。
自転車はかつて、社会的弱者の乗り物と見なされていた。しかしそれは対自動車の観点であり、歩行者に対しては明らかに強者だ。にもかかわらず、その意識を持って自転車に乗る人は多くはない。
雇用者のリスク
自転車通勤者を抱えることによる雇用側のリスクも無視できない。
マイカー通勤時に事故を起こした場合、基本的に本人のケガ等については労災が適用される。だが、事故の対象についてはケース・バイ・ケースで、本人が責任を負うこともある。とはいえ、自動車の場合は強制保険と任意保険両方に加入している運転者は多いし、企業によっては営業車両だけでなくマイカー通勤での賠償責任に備えているところもある。
だが、自転車に関しては、そこまでの意識はなかなかないようだ。本人のケガについては労災が適用されるのは自動車の場合と同じだが、他人にケガを負わせるなどの事故を引き起こした場合、会社も、従業員自身も、何の対策も講じていないケースが多い。
自治体などの指導に従って自転車通勤を推進している企業でも、傷害保険や個人賠償責任保険などへの加入を勧めたり、会社として団体保険に加入するなどの対策を打っているところは少ない。