嵐「非エリート集団」が国民的支持を得た理由 活動休止発表後「ネット進出」加速、後輩に先鞭

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嵐は、その黄金期を担ったジャニーズJr.からの最初のCDデビュー組だ。
滝沢秀明、今井翼、山下智久、生田斗真、風間俊介、小原裕貴、さらに渋谷すばるら後に関ジャニ∞となるJr.たちなど錚々たるメンバーを差し置いての抜擢だった。また、デビュー曲の「A・RA・SHI」は「バレーボールワールドカップ」のイメージソングで、前回大会でデビューした先輩・V6に続く大役でもあった。

一言で言えば、ジャニーズの「王道」。それが「世界中に嵐を巻き起こす」「『あ』と『A』という最初の文字から始まる名前で頂点に立つ」という願いを込めて命名されたグループ、嵐のデビューだった。

「普通の若者」という魅力

ただ嵐のメンバーたちは、いわゆるエリートとは少し違っていた。当時の黄金期の中心にいたのは滝沢秀明であり、松本潤も嵐になったときは「なんでオレらなんだ?」と思ったという(嵐『アラシゴト まるごと嵐の5年半』集英社、124頁)。相葉雅紀も、「デビューするなんて思ってもみなかったし。そんな自信もなかったし。不安で不安で、怖かったよ」(同書、47頁)と当時を振り返る。

またそれ以前に、デビュー前に芸能活動を続けるかどうか迷ったメンバーもいた。

大野智は、Jr.時代に「芸能界はもういいかな」と思い、一度はジャニーズ事務所を辞めようと考え、その意向を伝えてもいた。絵の関係の仕事に就きたいと思っていたのである。二宮和也も、嵐のデビュー直前に事務所を辞めてアメリカで映画の勉強をする決意を固めていた。

また櫻井翔は、Jr.時代には学業優先で生活していた。試験のひと月前からは仕事を休んだ。そのため仕事が減ったこともあったが、「それはそういうもんだ」と受け止め、「高校卒業したらジャニーズはやめようかな」と思っていた(同書、24頁、78頁、102頁)。

進路に悩むことは、彼らに限らず10代の若者にとって当然あり得ることだろう。だがそうした普通の若者たちが集まったことは、嵐というグループの大きな特色になったと思える。

一言で言えば、それは等身大の魅力である。それぞれの個性はしっかりある。だがそれが打ち消し合うようなことなく、自然に共存している。たとえば、嵐にはアイドルグループにはつきもののセンターが固定されていない。そういうところにも、5人のメンバー全員がありのままでいられるフラットな関係性が反映されているのだろう。

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