私たちが忘れた「愚行権」行使する人々の生き様 日本3大ドヤ街・横浜「寿町」で生きる人の実像

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座間市周辺には鳶尾団地やまつかげ台の建売住宅(いずれも厚木市)などがあり、畳の仕事が多かった。サカエさんは大崎の帳元に籍を置いたままで、座間のアパートから仕事先に通うようになった。

アパートは木造で、間取りは四畳半と六畳のふた間。サカエさんたちは一階に入居した。3人で暮らし始めた積もりが、ある日、ミチコがどこかに預けていた2人の子供を連れてきた。

「6歳と3歳の女の子だよ。おんで、オレは3人の子持ちになったんだよ」

しかもミチコには、”正規の夫”が存在したのだ。夫は座間のアパートを探り当てると、ちょうどサカエさんが夕飯を食べているとき、アパートに乗り込んで来た。

「手首と足首まで入れ墨をした奴が、手下を連れてきたんだよ。あれは、関西彫りっていうんだよ。オレは半ズボン穿いてたから、夏だったのかな」

”正規の夫”との対決

正規の夫が言った。

「おまえ、俺の家族をこんなところに連れてきて、どうする気だ」

サカエさんは正直に答えた。

「知らなかったんだよ」

「知らなかったじゃ済まねぇぞ」

ここまでは型通りの応酬だが、その先がちょっと違った。サカエさんはちょうどビールを飲んでいたので、ビール瓶を逆さに持って、

「帰れー」 

とふたりの男を一喝したのだ。サカエさんの剣幕に度肝を抜かれた男たちは、尻尾を巻いて逃げていった。

 そして……。

「ミチコも3人の子供も、一緒に行っちゃったの」

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