日本企業を「汚物扱い」した米国ファンドの正体 挑発したり貶めたりして獲物に食らいつく
金融アナリストのパフォーマンスを評価している「TipRanks」は、シトロンのレポートの的中率は54%と算出している。ただし、過去2年間でダウ平均は約12%、日経平均は約17%上昇しているので、カラ売りファンドにとっては向かい風の環境である。
なおカラ売りの利益は、カラ売りした価格と買い戻した価格の差額から、借株料、経費、売買手数料を差し引いた残額である。借株料は流通量の多い一流銘柄なら年率0.4~1%だが、株価に影響を与えるコーポレートアクション(株式分割、合併等)や悪材料で需給が逼迫した時は5~10%、あるいはそれ以上になる。
ファンドが払う売買手数料はセールストレーダーを介した時は0.4%程度、自分でやる電子取引だと0.05~0.1%程度である。
得意の中国案件で、地元ヘッジファンドに敗北
シトロンは中国案件に強く、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、売り推奨した18社の中国企業のうち、15社の株価が70パーセント以上下がったという。しかし、今年、得意の中国市場で、中国系ヘッジファンドに手痛い敗北を喫した。
問題となったのは、中国でスターバックスの向こうを張って急成長してきたコーヒーチェーン、ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲、福建省市廈門市)である。2018年1月に北京に1号店を出店して以来、2020年5月に6912店舗を有するまでに急成長を遂げ、米ナスダック(新興企業向け)市場に上場していた。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ラッキンコーヒーの急成長に疑いの目を向けたのは、香港と北京に拠点を持つスノー・レイク・キャピタルだった。カリフォルニア大学バークレー校で数学と経済学の学位を取り、投資銀行クレディ・スイス・ファースト・ボストンやニューヨークのアジア向け投資ファンドで経験を積んだショーン・マが、2009年に創業した中国系ヘッジファンドだ。
スノー・レイク・キャピタルは、昨年10~12月にかけて1500人以上を動員し、ラッキンの全店舗の15%を訪問し、店内の顧客数を数え、大量のレシートを集め、1万1000時間以上のビデオを撮り、売上が捏造されていると指摘した。
今年1月31日、スノー・レイク・キャピタルから情報提供を受けた米系カラ売りファンド、マディ・ウォーターズは、89ページにわたるラッキンの売り推奨レポートを公表した。レポートの発表でラッキンの株価は17%下がり、32ドル49セントになった。また複数の法律事務所がラッキンの株主に対し、集団訴訟を提起するよう提案した。
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