「GoTo延長問題」に致命的に欠けている視点

コロナ前から抱えていた課題克服を優先すべき

航空会社やホテルを中心に、観光業ではダイナミック・プライシング(Dynamic Pricing)という、価格を需要と供給の状況に合わせて変動させる価格戦略が広がっている。そのため、需要が集中する休日宿泊の観光旅行は高価格となりがちだ。

実際に、2019年の国内宿泊観光旅行1回1人当たりの消費額は6万0995円に上っている。さらに、主要交通機関別に見ると、新幹線利用は7万6558円、飛行機利用は10万5572円と旅行代金は跳ね上がる。苦労して公共交通機関や宿泊施設を確保しても、公共交通機関や宿泊施設、観光施設では混雑必至で高額となれば、国内宿泊観光旅行で泊数を増やしたり、何度も行くのが難しいのも当然であろう。

さらに、休日宿泊に偏る場合、観光業の事業者は従業員を正社員として安定的に雇用することが難しく、繁閑に容易に応じることができるようにアルバイトなどの非正規雇用に依存しがちである。安定的な雇用がなければ事業者には有能な人材が集まりにくく、かつ人材育成を進めにくい。

つまり、休日宿泊に偏っている状況は、旅行者にとっても事業者にとってもあまり好ましい状況ではない。

観光業がコロナ前から抱えていた課題を解決するには、個人の多様なニーズを満たす観光資源を多数開発し、旅行者に平日宿泊も推奨することで潜在的なニーズを発掘し、国内宿泊観光旅行の回数や1回当たりの宿泊数を伸ばし、国内宿泊観光旅行のマーケットを拡大することが肝要である。

その結果として、ピークシーズン頼みを脱却して、若者を中心に正社員の雇用を拡大し、その育成を通じて新たな付加価値をもたらす観光業への変貌が期待される。

Go Toトラベルは多様な観光ニーズを満たしにくい

国がコロナ禍の観光振興の切り札としているのが、7月から始まったGo Toトラベルである。旅行代金の35%を割り引くうえ、10月からは旅行代金の15%を地域共通クーポン(宿泊県とその隣接県の商品やサービスの購入に充てることもできる)として付与される。

これは非常に強力なディスカウントであるため、国内宿泊観光旅行の高価格という弱点をカバーするものといえる。しかし、いつ泊まっても割引率に違いはない以上、割引額で見ると休日宿泊の観光旅行がお得に映ろう。

さらに、年に1回程度しか行かないなら、このチャンスを利用して著名観光地にある、豪華な朝夕食付きプランが充実している高級ホテルや高級旅館に泊まりたいのは、割引額の大きさを重視しがちな旅行者の心理として当然であろう。

Go Toトラベルでは、公共交通手段を利用した宿泊旅行は基本的に旅行業者を通じて手配するほうがお得である。公共交通手段と宿泊施設をバラバラに確保した場合、宿泊料金はGo Toトラベルの対象になるものの、交通費は対象にならないからだ。

しかし、旅行業者の提供するパッケージツアーは、往復の交通機関や宿泊施設の選択肢の自由度が少ない。同じ交通機関により出発地と観光地を往復し、短期間宿泊する形のパッケージツアーが多い。また、パッケージツアーでは2泊以上を希望しても同じ宿泊施設での連泊するケースが目立つ。

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