「GoTo延長問題」に致命的に欠けている視点 コロナ前から抱えていた課題克服を優先すべき

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観光庁によると、2019年の国内における旅行消費額は27.9兆円であるが、そのうち訪日外国人旅行は4.8兆円、日本人の国内日帰り旅行は4.8兆円、日本人の海外旅行(国内分)は1.2兆円となっている。

一方、日本人の国内宿泊旅行(観光、出張、帰省などの合計)消費額は17.2兆円に上る。そのうち、国内宿泊観光旅行は10.4兆円を占める巨大なマーケットである(出張は3.0兆円、帰省などは3.6兆円)。訪日外国人旅行や日本人海外旅行、企業がリモート化を進めているため今後も減少が避けられない出張旅行などは当面需要が見込めないなか、それらを大きく凌駕する日本人の国内宿泊観光旅行に期待がかかる。

観光業は、宿泊施設や観光施設だけでなく飲食業や運輸業などにも及ぶ裾野の広い産業で、地域経済における存在感は大きく、かつ人口が少ない地域であっても、観光資源があれば発展する可能性がある。地方圏を中心に多くの地域でこれからの人口減少が避けられない日本では、全国各地で地域資源を生かして、付加価値の高い観光業を育成していくことが重要だ。

また、観光業は若者の就職人気が高いことを考えると、地方の観光振興は地方の人口減少の大きな要因となっている若者の流出対策の1つにもなろう。

国内旅行のコロナ前からの課題は休日宿泊への偏り

新型コロナウイルスの影響で当面、インバウンドに回復が見いだせないことから、マーケット規模の大きい国内宿泊観光旅行の振興に力を入れることが今後より重要になろう。その際、以下に記すような国内宿泊観光旅行が新型コロナウイルス発生以前から抱えている課題に留意する必要がある。

まず、国内宿泊観光旅行の日数が短いことである。前述のように、旅行消費額において圧倒的なシェアを占めるのが国内宿泊観光旅行であるが、1年当たりでは宿泊観光旅行の回数は平均1.4回、宿泊観光旅行1回当たりの宿泊数は平均1.7泊と、旅行回数と1回当たりの宿泊数は伸び悩んでいる。

(注)国内宿泊観光旅行の1人当たりの年平均旅行回数、旅行1回当たりの平均宿泊数、(資料)観光庁「2019年旅行・観光消費動向調査」(2020年)より、みずほ総合研究所作成

次に、観光旅行が主要観光地での休日(土曜日を含む。以下同じ)宿泊に偏っていることである。旅行者はゴールデンウィークや冬季・夏季休暇などの長期休暇や土日祝をメインとした宿泊が多く、休日は大都市と主要観光地を結ぶ交通機関と主要観光地の宿泊施設が大混雑し、平日は両者ともに比較的閑散となるのが一般的である。

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