日経平均が来年2万8000円になる条件とは何か 今は「青天井」、もはや「売りの相場」ではない

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足元の日経平均は急騰しており、「1991年以来29年ぶりに2万6000円台を回復」との報道で国内メディアもお祭り騒ぎだ。前述の通り短期的な調整はあるにせよ、中期的に日本株式(日経平均)に強気だ。

ただ、今の日本株式は、決して割安ではないと見るべきだ。それは主に以下の2つの理由による。①新型コロナ以降、急降下した「EPS(1株当たり利益)」の戻りも鈍く、新型コロナ前の水準には到底及ばない。②株価収益率(PER=株価を1株当たり利益で割った)では、2000年のITバブル期やリーマンショック前時の割高感はないが、過去10年間では最も割高な水準だ。

ではなぜ、中期では強気なのか?これは以下の2つの理由による。①今年最大のリスクイベントであるアメリカの大統領選を無事通過(ねじれはポジティブ)した、②新型コロナウイルスのワクチン開発期待の高まりなどにより、ずっと様子見だった海外投資家が、やっと日本株式を買い始めたことが大きい。11月2~6日の1週間で海外投資家は、現物と先物合わせて1兆0990億円の買い越しに転じた。まだ、この買いは続く可能性が高いとみる。

TOPIXがどこまでキャッチアップできるかがカギ

私自身、これまで以下のとおりに判断してきた。日経平均が2018年10月2日終値で2万4270円(ザラバ高値は2万4448円)前後になったときから「2万4000円台は売りだ」と弱気スタンスに切り替えて警笛を鳴らした。

逆にコロナショック直後の2020年3月には「1万7000円以下は買い」と強気に転じた。不透明感があった大統領選挙までは「2万4000円は重い。2万2000円~2万4000円のレンジ相場」と予想してきた。

今回、11月4日にレンジ上抜けすると見て「まずは上値2万4500円をめざす。アメリカの議会はねじれで買い」と中立から強気(短期・中期)にスタンスを変えた。

さらにレンジを抜けたことで今の相場は「青天井」であり、もう「売りの相場」ではない。2万6000円台定着から2万8000円をめざす「買いの相場」なのだ。(もちろん、投資判断は自己責任だが、)高値をつけた相場に飛び乗るか、下がったときに狙う「押し目買い」かの判断が試される局面とみている。

今後、日経平均がさらに上値を追うには、日経平均(225銘柄の単純平均、グロース株比率が高い)と比較して、大きく出遅れているTOPIX(東証1部全銘柄の加重平均、自動車や銀行などバリュー株比率が高い)が、どこまでキャッチアップできるかがカギになりそうだ。

その意味では、内需の底上げになるGoToキャンペーンや景気対策にも期待が集まる。2018年10月2日高値1838はもちろん、同年1月23日高値1911ポイントをいつ上抜けしてくるのか、期待を込めて見守りたい。

現在、マーケット参加者は、低い1株利益水準や高いPER(株価収益率)で見ると割高に見えてはいても、それ以上に「コロナを克服する(遅くても)数年後の業績をイメージする」というように、スタンスが強気に変わった。日経平均が2万6000円を突破したことで、来年の2021年には2万7000~2万8000円も夢ではなくなりつつある。

ただ、日本株式にとって短期的なリスク要因は、世界的なコロナ感染拡大(ロックダウンによる経済封鎖、死亡者の拡大)による世界景気の低迷などだ。また債券市場ではアメリカの長期金利上昇、為替はバイデン政権のドル安(円高)政策などが気になる。株式ではもちろん上昇したアメリカ株式の下落だ。マーケットに絶対はない。リスク要因をしっかり見極めながら、しっかりと相場に挑みたい。

糸島 孝俊 株式ストラテジスト

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いとしま たかとし / Takatoshi Itoshima

ピクテ・ジャパン株式会社投資戦略部ストラテジスト。シンクタンクのアナリストを経て、日系大手運用会社やヘッジファンドなどのファンドマネジャーに従事。運用経験通算21年。最優秀ファンド賞3回・優秀ファンド賞2回の受賞歴を誇る日本株ファンドの運用経験を持つ。ピクテではストラテジストとして国内中心に主要国株式までカバー。日経CNBC「昼エクスプレス」は隔週月曜日、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経ニュースプラス9」、ストックボイス、ラジオNIKKEIなどにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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