スポーツの聖地、国立競技場の最後の日 父と息子の半世紀の物語
息子の坂井はこう振り返る。
「仕事も忙しかったし、基本的にオリンピックのことを語る父親ではなかったので、あまり詳しく聖火ランナーだったことを聞いたことはなかったのです。ただ、広島の実家には、トーチが置いてあったし、昔、聖火ランナーとして国立を走った父だということは、いつもどこかで感じていました」
5月31日夜9時からオンエアする番組では、聖火消灯イベントをライブで中継する。その準備のため、坂井は半世紀前に父親が駆け上がったのと同じ場所に立った。
「ああ、父親はここに上がったのだ、と思いました。記事の中で父親は『特等席でした』と言っていたのですが、まさにすばらしい眺めでした」
坂井厚弘にとって、国立競技場と聞いていの一番に思い出すのは、1991年の世界陸上である。カール・ルイスが9秒86の世界新をたたき出した大会だ。もちろん、坂井に限らずとも、陸上、サッカー、ラグビーと、皆それぞれがそれぞれの国立競技場の思い出を抱えている。競技者も観客も。だからこそ、国立競技場には言いしれぬ重みと魔力が備わっていたのである。
そんな何百万、何千万もの思い出が詰まった国立競技場は、半世紀の歴史にまもなく幕を下ろすわけだが、それはすなわち、2020年の東京オリンピックに向けての新たな出発をも意味する。
坂井厚弘は今、「緊急生中継! さよなら国立競技場」が6年後に向けての架け橋となることを願いつつ、新たな物語を生み出していきたい、と思っている。
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