「ルーテシア」全面改良でも旧型に似ている訳 人気車種ならではのフルモデルチェンジの仕方

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ヨーロッパBセグメントのベストセラーという実績が納得できるレベルの高さを体験させてくれた新型ルーテシアであるが、トピックはこれだけではない。「E-TECH」と呼ばれる初のハイブリッド車(HV)も用意しているからだ。

メカニズムの一部をルノー・日産・三菱アライアンスで共用しつつルノーが新開発したもので、ガソリン車より大きな1.6リッター直列4気筒エンジンに2つのモーター、マルチモードギアボックス、1.2kWhのバッテリーを組み合わせる。

ヨーロッパ車でよく見られるプラグインハイブリッド車(PHV)ではないので、充電設備は不要。よって、車庫事情の厳しい日本市場にも適応するだろう。インポーターのルノー・ジャポンでは導入を検討中だという。

新たにハイブリッドを用意した2つの理由

日本でもルーテシアの最大のライバルになるであろうプジョー208は、ガソリン車のほかに電気自動車(EV)の「e-208」を設定した。プジョーが属するグループPSAは、Cセグメントを境にそれ以下はEV、それ以上はPHVでの電動化を考えている。

そんな中で日産とともにEVに積極的な姿勢を見せてきていたルノーが、BセグメントのルーテシアにHVを用意したのは、2つの考えがあると思っている。

最大のライバルとなるプジョー208。日本国内でもEVを発売した(筆者撮影)

1つは、最近フランスで発表されたトゥインゴのEV版との関係だ。トゥインゴがAセグメント、ルーテシアがBセグメントと車格が近いので、差別化を図るためにルーテシアはHVにしたのではないかと考えている。

もう1つは、厳しさを増すヨーロッパCO2排出量規制への対応。2021年以降は新車の平均排出量を95g/km以下にすることが至上命題となっており、クリアできない場合は1台1gごとに95ユーロの罰金を支払うことになる。エンジン車だけでは罰金は必至で、ルーテシアのクラスは罰金分を価格に転嫁することも難しい。

歴代ルーテシアは、ガソリンエンジンのスポーツモデルR.S.を用意してきた。新型に設定されるかどうかは現時点では不明だが、ハイブリッドを高性能車種として位置付け、負担を減らそうとしているのではないかと予想している。ライバル、プジョー208とともに、ヨーロッパBセグメントを牽引していく存在になることは間違いない。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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