ビジネス研究の論文誌も専門書も読んでいない
このようなとき、筆者は、生意気にも次のように申し上げることにしています。例えば相手が電気・電子産業界の企業の方でしたら、
「御社には研究所や開発部門があり独自技術の創造を目指して研究や開発されていますね。そこで研究や開発をされている技術者の方々は最新のトップジャーナルにどのような研究成果が発表されているのかご存じのはずです。電子系、物理系の方々は“IEEE Transaction 何々”とか“Physical Review” “Nature”などを見たり読んだりされているでしょうし、化学系の方は“Journal of Chemical Physics”とか“Physical Chemistry”などをチェックされていることでしょう。また、基本的な事柄を確認するためには専門書もきっと勉強されたりしていることと思います。少なくともそうでなければ、御社の技術力を維持することすらできないはずです。
しかし、その一方で皆さんは経営戦略や技術戦略を考える立場でありながら、先ほど挙げたビジネス研究の論文誌も専門書も読まれていないようです。一般ビジネスパーソン向けのビジネス書やビジネス誌を読んだだけで世界と戦える経営戦略を立てよう、というのは一般人向けの技術解説書である「よくわかる○○」と「日経エレクトロニクス」を読んで世界最先端の電子機器技術を開発しようとするようなものです。小人数でも良いので、技術経営学なり経営学なりを研究する部署、研究とは行かずとも、せめてビジネスの専門書や論文をチェックして最新の知識を社内に紹介できる人が何人かいても良いのではないでしょうか」
と申し上げることにしています。
文部科学省「学校基本調査」平成21年度によれば、日本の大学学部生約253万人のうち、約89万人(35%)が社会科学を専攻する学生で、人文科学を専攻する学生が約39万人(15%)、工学を専攻する学生は約40万人(16%)、理学専攻は約8.2万人(3.2%)です。
しかし、これが修士学生となると総数約16.7万人中、社会科学専攻約1.9万人(11%)、人文科学専攻約1.3万人(7.5%)、工学専攻約6.6万人(40%)、理学専攻約1.4万人(7%)となり、人文・社会科学系と理工系の学生数は逆転します。
単純に学部学生数に対する修士学生数の比をとると、社会科学2.1%、人文科学3.1%、に対し、工学16.5%、理学は16.7%となります。理工系学部学生10人のうち1~2人は修士課程に進み研究を行って修士論文を書くのに対し、人文科学系の学部学生で修士課程に進み修士研究を行うのはわずかに100人に2~3人だけです。
また、理工系では学部を修了する際にも卒業研究を課す大学が多いのに対し、人文・社会科学系では学部生には卒業研究を課していない大学も少なからずあると聞いています。すなわち、日本の大学・大学卒ビジネスパーソンの過半数を占める人文・社会科学系出身者のほとんどが、研究を経験するどころか、体験すらしていない、ということになります。
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