外食チェーンが訴える「政府支援策」の貧困 固定費負担に耐えきれず、店舗閉鎖ラッシュ

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各種支援策の中で金額が大きかったのは、休業手当の一部を国が負担する雇用調整助成金だった。1人当たり1日1万5000円を上限に支給されるため、ほぼ全店を臨時休業した4~5月は、1月当たり約5000万円の支給があった。

家賃支援給付金や持続化給付金は、資本金10億円以上の企業は対象外となる。その理由について、中小企業庁の担当者は「今回の制度についてはコロナで影響を受けやすい中小企業に対象を絞った。(資本金の大きい)大企業であれば、融資などそれなりの手立てを打つことができるだろう」と説明する。

店舗閉鎖に踏み切るチェーン店も

だが、ある大手外食チェーン幹部は、こうため息をつく。

「子会社もみなし大企業の適用を受けるため、グループ全体で雇用調整助成金以外はほとんど受給できていない。目先の運転資金の確保で精一杯な中、来年以降も売り上げが戻らず返済額だけ増えるとなると、中長期にわたって厳しい状況が続くだろう」

重い固定費負担を少しでも軽減するべく、大規模な店舗閉鎖に踏み切るチェーンも増えてきた。居酒屋「甘太郎」などを展開するコロワイドは2021年3月期中に196店、牛丼チェーンの吉野家は2021年2月期中に最大150店を閉鎖する。また、ファミレス大手のジョイフルは2020年7月以降に200店程度の閉鎖を計画している。

とはいえ、店舗を閉鎖すれば問題が解決するわけではない。店を閉める場合は不動産契約上、店舗を借りる前の状態に戻さなければいけないことが多い。一般的な牛丼チェーンの店舗(20~30坪程度)で1000万円、居酒屋チェーン(50~70坪)だと3000万円程度の費用がかかるとされる。コロナの影響が特に大きかった居酒屋業態などを中心に、外食チェーンはまさに「閉めるも地獄、閉めざるも地獄」という状況に陥っているのだ。

苦境を予見していた外食業界は早い段階からSOSを発信していた。ファミレス大手・ロイヤルホールディングス(HD)の菊地唯夫会長らは3月に官邸で開かれた新型コロナウイルスの影響に関する集中ヒアリングに出席。外食の需要喚起策や雇用調整助成金の適用対象拡充・増額の必要性を説いた。4月以降も与野党に窮状を訴え続けた。

こうした努力が実を結び、5月末には自民党内に外食チェーンへの支援策を検討する「多店舗展開型飲食店議員連盟」(所属議員数76人、会長・麻生太郎財務相)が発足。外食業界は大きな期待を寄せている。

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