43歳男に結婚を決断させた彼女の"絶妙な押し" 「つかみどころのない彼」はなぜ動いたか

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最大の決め手は美奈子さんの何気ない一言だった。出会いの場であった飲み会の際、圭一さんの隣に座って「しっくり来た」。その感覚は、付き合い始めてからもずっと変わっていないという。

「今までの僕は見てくれで女性を選んで失敗していました。でも、今回は妻のほうが僕を気に入ってくれたんです。『しっくり来る』と言ってもらえて安心しました。認めてもらえたのかな、と」

精悍で男らしい風貌の圭一さんだが、繊細で心配性な内面を抱えているようだ。筆者は本連載を通してさまざまな晩婚さんを観察しており、未婚男性には圭一さんのようなタイプが少なくないと感じる。今までの生活を変えるのを怖がる傾向が強いのだ。結婚というある意味ではハイリスクな新生活に突入するためには、結婚相手をはじめて周囲があの手この手で背中を押す必要がある。

言うべきことはビシっと言って…

春に結婚してからは、コロナ禍の真っただ中ながらも圭一さんと美奈子さんは平和な新婚生活を送っている。美奈子さんはパートで働いていた職場を辞めて、家庭に専念。出張の多い圭一さんが帰ってくると、料理の腕を振るってくれる。

「結婚式もしていませんし、新婚旅行にも行けていません。家具も完全にはそろえ切れていませんが、妻の希望で大きなオーブンとミキサーを買いました。朝、スムージーを作ってくれるので美味しく飲んでいます」

今は大企業でさまざまな人との調整が必要な業務を担っている圭一さん。年齢を重ねるにつれて父親に似てきたと感じていて、職人的な仕事に転じることを考えている。年収などの条件は悪くなるはずだが、美奈子さんは「応援する」と言ってくれていると圭一さんは穏やかな表情を見せる。

今後の夢は、来年のうちに子どもを作ることだ。それぞれ不妊治療クリニックに通って検査を受け、「まずは普通」の妊娠を目指してそれぞれのサプリメントを飲んでいるらしい。

「もっと早く結婚しておけばよかったとは思いません。僕はこんな性格なので、若い頃だったらほかの女性に目移りしたりしてうまくいかなかったと思います」

つかみどころはないが、働き者で率直ではある圭一さん。昭和の時代だったら、20代のうちにお見合い結婚をして、今頃は3児の父親だったりしたかもしれない。ただし、圭一さんがそれで本当に幸せになっていたのかはわからない。

多くの男性が自信を持ちにくく、何事にも強制力が働きにくい現在。圭一さんのような人には相手の女性が「男気」を発揮するしかないと思う。ハートのつり革を見せて安心させつつ、言うべきことはビシッと言ってリードするのだ。この前提があれば、望むような家庭生活を築くことは十分に可能だと思う。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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