結婚とはハイリスク・ハイリターンな行為だなと思う。最もリラックスしたい時間と場所を赤の他人と共有するからだ。
朝食に毒でも混ぜられたら気づかないままあの世に行ってしまうだろう。実際には死ぬほど極端な危険はほとんどなく、多くの場合は財産と人間関係の一部を失うぐらいのリスクだ。それでも結婚に及び腰になってしまう人は少なくない。
得られるものも大きい。信頼関係で結ばれた誰かと生活を分かち合うことは大きな安心をもたらしてくれる。結婚相手の関心事や人間関係に特権的に入っていけるし、世の中には夫婦だからこそ楽しめることもある。その気になれば自分の世界を数倍に広げていける。
自意識と慎重な性格が結婚を遠ざけていた
医療関係の専門職として働く田原純子さん(仮名、41歳)は、「及び腰」のまま30代後半まで過ごし、今年の春に4歳年上の紀之さん(仮名)と結婚した。生来の性質と年齢に関する自意識が原因だったと純子さんは自己分析する。
「結婚願望はずっとありました。でも、私はやることが人よりも遅いほうなので、きっと結婚もみんなより遅いだろうな、30歳ぐらいでの結婚かな、と子どもの頃から思っていました」
20代後半の頃、働きながら大学院に通い、現在の仕事に必要な資格を取得した純子さん。大学院を卒業して転職した先で、8歳年上の同僚と付き合い始めた。
しかし、今度は彼のほうが転職をして遠方に赴任してしまう。新たな仕事に就いたばかりの純子さんは「会社を辞めてついて行く」気持ちにはなれなかった。お互いにバリバリと働いている30歳前後のカップルにありがちな別れである。純子さんは32歳になっていた。
「年齢のこともあるので、次に付き合う人は将来を一緒に考えられる人でなくちゃ、と思うようになりました。もともと慎重な性格で、『ダメなら早めにサヨナラすればいい』という考え方はできません。さらに年齢を意識し始めたので、ますます難しくなりました。友人に『紹介して』とお願いして、実際に『こんな人がいるけれど、どう?』と言われても、会ってダメだったことを考えると行動に移せませんでした」
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