命と経済の両立は難局、雇用調整助成金に課題 実体経済に気をつけるべきシグナルが出てきた
「積み残しの需要」がなくなってきた
――グロース調整とストック調整の二重苦についてお話しいただけますでしょうか。
北野:「グロース調整」はこれまでも何度かお話しさせていただいたんですけれども、実体経済のほうも少し気をつけなければいけない。そういうシグナルが出てきているのではないかなというふうに思います。
アメリカのISM指数の製造業と非製造業における実績と予想の差を見ると、3月、4月、5月、6月と実績が予想を大きく上回っていた。思った以上に景況感の改善があった。
ただ直近でいうと、製造業は実績が予想を下回っている。非製造業は実績が予想を上回ったものの、上回る幅は小さくなってきている。思ったほど景況感の回復がなくなってきたというのが、最近の特徴かなと思います。
それはこういうことなんですよ。コロナショックでお金を使う予定が使わなくて済んだとか、そういうのは「ペントアップデマンド(景気後退時に一時的に控えていた消費者の購買行動が、景気回復時に一気に回復すること)」と言われるんですけども、それがどんどん消化されていって、ついにその積み残しの消費や需要がなくなった段階、それが今なんだろうなというふうに思います。
そういうものが、雇用にも少しずつ出てきていることを示したのが、この画(「新型コロナの雇用への影響」)なんですね。これは厚生労働省が毎週発表している、雇用調整の可能性のある事業所数とそれから労働者数なんです。
これは毎週、累積値で発表していたんですよ。ところが10月の2日週から累積値ではなくて前週比で発表するようになった。累積値で見たときに、10万事業所なんていう数字が出てくるのはちょっと具合が悪いのかな、と勝手に邪推しているんです。
いずれにしても事業所数でいうと10万、労働者数は6万人強。こういう方々の雇用がなくなるおそれが出てきているというのが今の状況ですね。
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