日本を支配する「空気の暴走」は止められるのか

なぜ同調圧力が強い国だと感じられるのか

新型コロナ禍において、日本政府の国民への制限が極めて抑制的というか、ゆるいことはよく指摘されていました。ロックダウンとか外出禁止とか営業禁止とか、諸外国がどんどん私権を制限する政策を実行しているのに対して、日本政府は「お願い」を繰り返すのみでした。しかし、多くの国民は空気を感じて、実質的に私権を制限されていました。

私も経営する学習塾を「空気」を読んだすえに休業することを余儀なくされていました。法的に制限されていたわけではありません。保護者から「開いてほしい」という声もありました。しかし、それでもやはり開けませんでした。

もし開けば周囲から何を言われるかわからない。また万一感染者を出したら再起不能のダメージを受ける。そう考えると、自粛要請に逆らうのは並大抵の覚悟ではできません。この感覚は、多くの日本人は共有できるものでしょう。

宗教的な戒律が強い力を持つ国や、法律による私権制限が比較的容易な国には「明確な掟」が張り巡らされているので、空気という曖昧な掟が幅を利かせる余地があまりありません。一方で、戒律のような明確な掟が少なく、政府が私権の制限に抑制的である日本は、空気という曖昧な掟が自然発生して広まり、人々を縛ることができる。誰が決めたのかよくわからず、明文化すらされていない掟が国民の行動を実質的に縛るのです。

「空気」にはメリットもある

この空気という掟の存在をネガティヴにとらえれば「息苦しい」ということになるのでしょう。ただ、実はマイナス面ばかりではないと私は考えています。

東日本大震災からほどなくして、この危機においても規律を重んじる日本人の姿が賞賛されました。略奪などの混乱が生じず、市民が節度をもって行動したからです。

これも空気という掟が機能したと見ればわかりやすい現象です。諸外国では、危機において必要な掟をすぐに準備できないため社会は混乱してしまうわけですが、日本においては必要な掟が勝手に生じるため、かなりのレベルで社会が機能します。細かく見ていけば小規模な暴動・混乱等々はありますし、実際に東日本大震災後にも見られました。それでも諸外国より混乱が少なかったのは自生する掟のおかげと見なせます。

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