武漢を蔑む日本人は「中国人の本質」を知らない

彼らは幸せで「自分たちは強い国」と思っている

武田:マスクが手に入らず不安になり、まとめ買いが起きるのではないかとスーパーに多くの人が駆け込み、不測の事態に病院は混乱し、医療従事者が疲弊していく。同じことが起きていた。飯塚さんは翻訳されていて、「同じ」と感じましたか、それとも「違う」と感じましたか?

飯塚容(いいづか ゆとり)/1954年、北海道生まれ。中央大学文学部教授。訳書に、高行健『霊山』『ある男の聖書』『母』(いずれも集英社)、閻連科『父を想う』、余華『ほんとうの中国の話をしよう』『中国では書けない中国の話』『死者たちの七日間』(いずれも河出書房新社)、鉄凝『大浴女』(中央公論新社)、蘇童『河・岸』、畢飛宇『ブラインド・マッサージ』(いずれも白水社)など(写真:本人提供)

飯塚:同じだと感じるところのほうが多かったですね。いま武田さんがおっしゃったような生活レベルの話がこの本のいちばんの読みどころで、まずはそういう生活日記として受け止めてほしいと思っています。庶民が、いろいろな形、いろいろなレベルで協力しながら、困難な状況を乗り越えようとしている。頼りになるのは血縁であったり、地縁であったり、そういう姿には日本人も見習うべき部分があると思います。

武田:1月25日から書き始めた日記ですが、2月2日の日記で、著者の方方さんが、最近「若い人がますます功利的になったことを心配した。ところがいま、元気あふれる彼らを見て思う。私たちのような年寄りの心配は無用だ! いつの時代にも、その時代にふさわしい人が出てくる。老人の杞憂は必要ない」と書いています。若者たちが自発的に対応し、グループチャットなどで助け合っている光景は、素直に、頼もしく感じられたのだなと。

飯塚:ボランティアもどんどん集まって、そういう力によって救われた部分は大きかったようです。日本でも、災害時に民間のボランティアが力を発揮してきましたが、同じようなことが中国でもちゃんとあるんですよね。武田さんがおっしゃったように、強奪だとか、中国のひどい場面をマスコミは流したがる。

今回のコロナのことに限らず、以前からワイドショーなどはそういう低レベルな報道に満ちあふれているわけですが、それとは違う非常に温かいものもこの日記から感じられます。

勝手に完成していた「武漢」のイメージ

武田:メディアから受ける「武漢」のイメージを持ったまま、この本を手にとると、まずは、どれだけ殺伐としていたんだろう、という興味が先立ちます。

しかし、実際に開いてみると、人と人とのつながり合いがさまざまな局面で出てくる。最初に頭に思い描いていた「まったく知らないのになぜか完成されていた武漢像」がめりめりとはがされていく。勝手に頭の中で固めていたという判断自体に、恥ずかしさというか、危うさを覚えました。

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