「リモートより対面派」公言するのが危険な理由 「渋々出社」部下の説得にはエビデンスが必要

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まだ研究や各社の実践が現在進行系であるということが難点で、確信的に「これがいい」とまでは言えなくとも、それでもすでにかなりのエビデンスが集まっています。

それらを踏まえれば、自社はどういう働き方に戻すべきか、ある程度はわかります。

次に、どういう働き方にするかというゴールが決まったとしても、それを社内に発表して、納得や合意を得なければなりませんが、実はそれが難しいのではないかと思います。

リモートワークのメリットを一度知ってしまった人は、もとのリアル出社に戻ることに反発を感じるかもしれません。リモートワークがつらかった人は、喜ぶかもしれません。このように、全員が完全に納得するような働き方はありえないからです。

つまり、どんな働き方に決めようとも、絶対に誰かは不満を持って、反対しているということです。ここを人事制度を作るのと同じくらいの丁寧さで対応していかねばならないと思います。

エビデンスがここで効いてくる

もし、働き方を決めるのに、社員各自の「好み」だけで考えていたら、先に述べたように絶対に合意はありえません。

ここで効いてくるのがエビデンス、です。みんながそういう働き方をしたいから、で説得するのではなく、このように働くほうが自社の仕事においては、効率的であり創造的であるということを、事例や研究などによって説得することが必要です。

働く人々の価値観はとても重要ですが、そもそも働く目的は事業を通じて社会に価値を提供することですから、この観点から「この働き方がよいのだ」と言われれば、まともな人なら納得せざるをえないでしょう。

しかし、「納得せざるをえない」ということは「心から同意している」こととは違います。理性的に考えてそのほうがいいのであれば、自分は完全リモートワークがいいのだが、渋々リアルに戻ろう、などと考えているわけです。

そこへ、リアルな場で仕事をするのが好きなマネジャーたちが、明るく「やっぱり対面はいいなあ。マネジメントもしやすいし!」などと放言していると、彼らはどう思うでしょうか。きっと「あなたたちのような人がいるから、本当はリモートワークができたのに、リアルに戻ってしまった」と思うことでしょう。

現状の各社員やマネジャーのリテラシーが理由でリアル化を進めた場合はとくにそうです。

ですから、つまらない話ではありますが、明るく「リアルがよい」とか「リモートがよい」とか、仮にも多くの人をまとめるマネジャー層や経営や人事は言ってはいけないのです。

どんなゴールを作っても、誰もが少しずつ我慢しているというのが実態なのですから。それを察することなく、決めた新しい働き方、自社における「ニューノーマル」を礼賛していると、「人の気持ちのわからない鈍感な人」だというレッテルを貼られてしまうかもしれません。

コロナ後の働き方はまだまだ全国で模索中です。くれぐれも軽口をたたかないようにし、社員の「好きな働き方」の本音を聞き出すようにしましょう。

(文/曽和利光)

曽和利光(そわ としみつ)/株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長。1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
「OCEANS」編集部

メンズファッション&ライフスタイルの情報誌『OCEANS』は、 “37.5歳”をキーワードにした独自の切り口が支持を集め、2006年の創刊以来、多くの読者にご愛読いただいています。2017年1月にはデジタルメディアを大幅リニューアル。ファッションはもちろん、毎日の“オッサンライフ”をもっと楽しくするハウツー情報の配信だけでなく、「対話するWEBマガジン」をテーマに、スナップ、動画、イベントなども展開していきます。

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