ぜんそく患者「コロナ禍で急減」という衝撃事実 予防や服薬など患者の行動変容が引き起こした

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東大大学院医学系研究科・公衆衛生学教室の宮脇敦士助教(写真:本人提供)

宮脇助教は公衆衛生の研究をする一方、医師として臨床の現場にもいる。統計的に見て、季節性インフルエンザはすでに例年に比べて急減しているが、宮脇助教は外来診療をする中で、「明らかに発熱患者が減っている」と肌で感じている。今回の新型コロナの流行で国民が感染症を予防するために、手洗いや手指消毒のほか、密閉、密集、密接を避けるいわゆる3密を回避するなどの予防行動を徹底している。個々人の行動変容が起きている。

大規模診療データベースの研究に手応えを感じている宮脇助教は、「新型コロナはある意味、大規模な社会実験かもしれない」と話す。今後の課題としてコロナ禍による診療パターンの変化により、検査数値の改善度合いといった「アウトカム」にどのような影響を及ぼしたかを調べてみたいと意欲的だ。

医療費削減につながるかもしれない

糖尿病患者の血糖値コントロールでは、定期的な血液検査が一般的だ。HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)を測定して、採血前の約1~2カ月の平均血糖値をチェック、血糖値が安定しているかのアウトカムを確認している。コロナ禍で検査回数が減ったとしても、そのアウトカムに変化がなければ、検査の間隔を延ばして検査回数を減らすことができるかもしれない。

この仮説が立証されれば、例えば、これまで当たり前にやっていた1カ月に1回の検査回数を2カ月に1回に減らせれば、医療費など患者負担の軽減につながる。大規模診療データベースに基づいた研究により、無駄な検査を減らすことができるかもしれない。

宮脇助教はまた、「コロナ禍以前の、保育所など密になる場所が子どもの間でのウイルス性疾患の感染拡大につながっていたのならば、大人が仕事をしやすくなるための代償だったとも考えられる。社会全体の利益を考えるうえで、その代償が適切であったのかも、このコロナ禍をきっかけに考え直すきっかけになるかもしれない」と問題提起をする。現代のライフスタイルの変化が、社会全体で見ると損失になっている側面があるかもしれないというのだ。

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