メディアが隠す「トランプ支持者」多様化の実態 民主党の牙城ロサンゼルスで見た驚きの光景

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サンタモニカのがん専門の医療機関に転職し、その後は医療機器メーカーに転職。医療業界で必死に働き、キャリアの階段を上った。「私の肌はダークな色だし、見た目は完全にラティーナ。でも、白人中心の医療の職場で、ドクターたちから不当に扱われたことは今までない」。

両親を安心させたい、経済的に自立したい、という強い思いを抱く彼女は、「かわいそうなマイノリティたちの救世主と崇められていたオバマよりも、口は悪いけれど、経済の規制をとっぱらい、減税を実行し、国民に富を直接還元するトランプの行動のほうが、実際にマイノリティを幸せにしているのではないか」と感じるようになった。

白人男性と婚約し、トランプ支持を妹に伝えると、ふたりの妹は、姉が白人男性に洗脳されてしまったと嘆き、姉を「レイシスト」と呼んだ。「つらいけど、妹たちいもいつかわかってくれると信じるしかない。リベラルな人々はいつも多様性を強調するけど、私のような保守派の価値観を非難し、意見を変えろと怒り、自説を押し付けてくる。つまり本当の多様性を認めていないのでは」。

4月に結婚する彼女は、将来、自分の子供が生まれたら「マイノリティという弱者として助けてもらうだけの存在であってほしくない」と感じている。「だから子供を育てるにしてもトランプ政権がいい。バイデン政権になったら、カリフォルニアから脱出するしかないかも」と語る。

「白人ストレート男性」であることのつらさ

「白人のストレート男性というだけで、レイシストだと思われるのは、もう、まっぴらごめんなんだ」。そう語るのはロサンゼルス在住の役者兼ユーチューバーの40歳のクリス・コールズさんだ。

オレゴン州セーラム出身の彼は黒人がほとんどいない、白人が圧倒的に多い地域で育った。「うちの両親も自分もクリスチャン。隣人を愛し、汝の敵を愛せよ、という聖書の教えに従う教育を受けた。だから黒人を差別するつもりなんて、自分や家族には微塵もない」。

クリス・コールズさん(写真:コールズさん提供)

そんな彼がハリウッドの世界でオーディションを受けてシットコムのドラマなどに出演する度に、感じたのは「白人ストレート男性」としての肩身の狭さだという。「すでに有名になっている白人男性以外、現在のハリウッドは白人男性を極力雇わない方向だ。アカデミー賞の規定が改正される前からもうずっとそうだ」とコールズさんは断言する。

女性とマイノリティを積極的に起用しなければというプレッシャーが強い映画・テレビ業界で、白人男性というだけで起用率が減るという。さらにハリウッド内で保守派であることや、トランプ支持を表明することはリベラル派の監督から嫌われ、「職を失う」自殺行為を意味すると言う。

そんな中、保守派を公言し「ミスター・レーガン」というユーチューブ・チャンネルを立ち上げた彼は、ロサンゼルスのエンターテインメント業界の異端児と言ってもいい。「女性の監督、女性の脚本家を採用し、女性パワーを強調しなければいけないこの業界では、実は多くの男性脚本家がゴーストライターとして“女性の企画”に送り込まれている。自分の名前がクレジットに載らない完全なる裏方の仕事だ。それが嫌なら海外で働くしかない」。

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