メディアが隠す「トランプ支持者」多様化の実態 民主党の牙城ロサンゼルスで見た驚きの光景

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そんな彼の発言は、ポリティカリー・コレクトではないとされ、自身のユーチューブ番組にリベラルな友人をゲストで呼ぼうとしても全員から断られ続けている。「保守派の番組になんか出たら、ハリウッドで2度と働けなくなるし、友人を全部失うから勘弁して」と友人たちに言われた。

「自分が住むダウンタウンはブラック・ライブズ・マター(BLM)のデモによる略奪で店がたくさん燃やされた。でも、白人男性がそう主張するだけで、レイシスト扱いされかねない雰囲気だ。事実を伝えているだけなのに」とコールズさん。

彼がトランプ大統領を支持するのは「実行力があり問題解決が早いからだ」と言う。一番評価しているのはトランプ大統領が規制緩和を推し進めてきたことだ。「エネルギー業界の規制を取り払い、中東和平交渉もやる。50年近くワシントンにいたバイデンができなかったことをわずか3年でやった」。

大統領選のディベートで、石油の油田の付近に住む人々の環境被害や健康被害が問われたとき、トランプ大統領は「油田の仕事で彼らは金銭的に潤っているじゃないか」と語り、バイデン氏は「いや、彼らはがんに罹患するなどの被害を受けて苦しんでいるのだ」と答えた。

ディベート放送後「大統領には人々の苦しみに共感する力が欠けている」と批判が起こった。それを受け、コールズさんは言う。

「共感力?そんな乙女チックな甘い言葉でいったい何人の国民が騙されてきたと思う?選挙前に優しい言葉をかけるだけで、実際は何もしない。それがリベラルの常套手段だ。トランプは、言っていることはきついが現実的だ。油田の側に住んで、油田で働いて大金を儲けると決めたのは、住民の選択だ。嫌なら他の土地に移住すればいい。炭鉱で働くのだって、リスクを取って金を儲けるという個人の選択。誰も強制していないんだ」

ユーチューバーになって生活水準が上がった背景

役者だけをしていた頃は、仲間とアパートをシェアして暮らすのが精一杯だったが、保守派ユーチューバーとなってから、25万人の登録視聴者を得て、広告収入により金銭的に潤い始め、ダウンタウンの高層賃貸マンションに引っ越した。つまり、それほどの数の人々が、ロサンゼルス在住の保守派の彼の声を聞きたがっているということの証明でもある。

彼がユーチューブでリベラル政治家を徹底的に叩くことで生計を成りたたせている以上、リベラル政治家の存在は彼の稼ぎに必須なのでは? と聞くとこう答えた。

「いや、たとえユーチューバーとして稼げなくなっても、リベラル政治家が全員落選してくれることの方が、自分にはありがたいね。トランプは自己愛が強すぎると言われるが、そうではないと思う。彼は自分をブランド、つまり商品として捉え、自分を買ってくれと国民に叫んでる。わかりやすさと実行力、これが彼の強みだよ」

反マスク派のコールズさんは、店に買い物に行く以外にマスクはしない。そのかわり何度もコロナ検査を受けてチェックしている。「スウェーデンのように、ロックダウンなど一切なしの政策を自分は望んでる。トランプもさすがにそこまで過激にはできなかったようだが。ロックダウンで経済が破壊されるのをこのまま黙ってロサンゼルス市民が耐え続けるとは自分にはとても思えない」。

世界で最も多様性に富んだ街、ロサンゼルス。そこに住むトランプ支持者たちは民主党の強い州内では圧倒的に少数派であることは自覚している。だが、確実に「カムアウト」する流れを作り出し、それに乗っている。もし例えトランプ大統領が今回の選挙で負けても、すでにカムアウトした彼らの存在は今後も残る。そこが2016年とは決定的に違う。

長野 美穂 ジャーナリスト

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ながの みほ / Miho Nagano

米インベスターズ・ビジネス・デイリー紙記者として5年間勤務し、自動車、バイオテクノロジー、製薬業界などを担当した後に独立。ミシガン州の地元新聞社に勤務した経験もある。

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