メディアが隠す「トランプ支持者」多様化の実態 民主党の牙城ロサンゼルスで見た驚きの光景

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「フリーダムが嫌いな奴は、とっとと中国に引っ越せ!」。そんなメガホンの声に合わせて、一同が「そうだ!」と叫び、トランプ支持者たちが一斉にロデオドライブの商店街を行進し始めた。多くの人がマスクをせずに大声で叫んでいる。新型コロナウイルスのスーパースプレッダーになりうる集会だ。

近くに寄って写真を撮りたいが、さすがに感染が怖い。ギリギリの距離を取って歩道の脇で写真を撮っていると、ロデオドライブのブティックで働く黒人男性がこう言った。「僕は、大統領選はバイデンに投票するけど、毎週土曜のこの光景を純粋にショーとして楽しんでる。長期のロックダウンを強行したカリフォルニア州知事とロサンゼルス市長には僕も不満があるからね」。 

LGBTQの権利を象徴するレインボー旗を身体に巻き付けたトランプ支持者(写真:筆者撮影)

ロデオドライブではコロナ禍で閉店が相次いでいる。ヴィダルサスーン美容室の看板がある店の中をのぞくと、がらんどうの空室になっていた。

別のブティックで働く黒人女性は「トランプに投票する女性がこれだけ多数いるという事実が恐怖。女性をさんざん軽視してきたトランプによく投票できるなと唖然とする」と厳しい顔をしていた。

そんな中、トランプ支持者のひとりは嬉しそうにこう語った。「大統領がコロナに罹患した頃から、隠れていたトランプ支持者が次第に“カムアウト”してきた。もうおそれて隠れなくていいんだという共通認識だ。何十年も民主党が牛耳ってきたこの街で。これはレボリューション(革命)だよ」。

ロスに住むトランプ支持者の本音

ラストベルトや「赤い州」ではない西海岸のロサンゼルス在住のトランプ支持者とは、いったいどんな人なのか。2人の支持者にじっくり話を聞いてみた。
    
「私が今回トランプに投票すると伝えたら、妹2人が激怒して、口をきいてくれなくなった」。サンタモニカ在住のジェシカ・アパリシオさんはそう語る。31歳の彼女は医療機器メーカーで働くメキシコ系アメリカ市民だ。

2016年のトランプ氏当選時、彼女はトランプ支持者ではなかった。「メキシコ国境に壁を作る。費用はメキシコに支払わせる」「ドラッグの売人やレイピストの入国を防ぐ」。そんな公約を掲げたトランプ氏が当選すると、ロサンゼルスのメキシコ人たちは激怒し猛反対した。

アパリシオさんも彼の当選に衝撃を受けた1人だ。「トランプはレイシスト(人種差別者)」。これがメキシコ人やメキシコ系アメリカ人の一般的な共通認識だと彼女は言う。5歳の時にメキシコから両親に連れられてアメリカ移住したアパリシオさんは、一家で合法移民したケースだ。

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