家族全員が正式に滞在許可を得て入国し、順番を守って永住権を申請した。母はホテルのコックとして、父は重機を扱う技師として、身を粉にして朝から晩まで働いた。アメリカで生まれた2人の妹たちは誕生した瞬間からアメリカ国民だが、アパリシオさんは5歳で移住した時から英語をゼロから学び、その後は永住権保持者として働きながらカリフォルニア大学のリバーサイド校に通った。
いつかアメリカ国民になろうと、市民権の申請費用をコツコツ自力で貯めた。「貧困生活からなんとか脱出してアメリカで家族をまともに食べさせたいと願う多くのメキシコ人の親の気持ちは、私にも痛いほどわかる。私もメキシコの農場で育ったから」と彼女は言う。
「違法で国境を越えて入国する以外の手段がなかった知り合いもいる。幸運だった私は彼らをジャッジするつもりはない。でも、アメリカが国境を警備し、合法移民のみを受け入れる方針は、人種差別でもなんでもない。メキシコからドラッグ売人やギャングがこの国に違法入国しているのは事実。国境に壁を作るのは、国の安全を守るための当然の行動だと思う」
カリフォルニア州に対する不満
職業政治家ではなくビジネスマンだったトランプ大統領の発言は、彼女には「新鮮な風」が吹いてきたように感じられた。
自身を「伝統的なファミリーの価値観が大好きな典型的な真面目な長女気質」と称する彼女は、2018年にアメリカ市民になり、投票権を得た。そして、これまで以上にトランプ大統領の政策を細かくチェックするようになった。
トランプ大統領が、黒人大学生への金銭的支援を制度化し、スモール・ビジネスへの減税を実行し、さらに40万ドルの大統領年俸のほとんどを寄付し、毎年1ドルだけを受け取っているーー。それらの事実を知ると、なぜCNNなどのメディアはそれを伝えないのか、と疑問を感じるようになった。
保守派のFOXニュースも一部視聴するようになったが、すべては信じていない。つねに自分で情報に当たり、数字をチェックして判断するようにしているという。
中でも彼女を悩ませているのは、カリフォルニア州の所得税の高さだ。全米でもトップクラスの税率が生活を圧迫する。彼女は大学を卒業し、インターンを経て、スポーツクリニックの医師の受け付けの仕事を得たが、金銭的にはずっとカツカツだった。家賃が高騰するロサンゼルス市内でひとり暮らしできる余裕はまったくなく、オレンジ郡の親元に住んで長時間通勤でロサンゼルス市内の職場に通った。
「必死に働いてもいつも経済的に厳しかった。これが祖国を離れてまで両親が私に望んだアメリカン・ドリームの実態なんだろうかと愕然とした。民主党が牛耳る州で、私たち労働者は高額の税金を搾り取られている。しかし、街にはホームレスがあふれ続けており、問題が何年も何年も解決されない。どう冷静に考えても、リベラルの政治がこの街で機能していないことを実感した」
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