ダイハツ「タント」発売1年、2位で手堅い通信簿 シニアをターゲットにした戦略は成功したか

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N-BOXとタントの差はおよそ8万台と僅差ではなく、それなりに大きなものであった。そういう意味で、N-BOXから首位を奪還することはできなかったと言える。

しかし、もう1台のライバルである、スズキのスペーシアは2019年7~12月が7万6639台、2020年1~9月が12万8866台で、どちらも3位。つまり、N-BOXには届かなかったが、スペーシアを退けている。大成功ではなかったが、2位の地位は死守したのだ。

  2019年7~12月 2020年1~9月
ホンダ「N-BOX」 12万2267台  20万2048台 
ダイハツ「タント」 9万3464台 13万5044台
スズキ「スペーシア」 7万6639台 12万8866台

 

なお、スーパーハイトワゴン市場には、そのほかに日産「ルークス(旧・デイズルークス)」、三菱「ekスペース」、同「ekクロススペース」、タントのOEMモデルであるスバル「シフォン」、スペーシアのOEMモデルであるマツダ「フレアワゴン」がある。

DNGAで実現したダイハツの新しいクルマ作り

現行タントにはもう1つ、大きな特徴がある。それが、ダイハツの新しいクルマ作りの手法である「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の第1弾モデルであること。新開発のプラットフォームやトランスミッションといった新技術だけでなく、一括企画による設計思想の統一など、文字どおりに新たなクルマの作り方にチャレンジしたのだ。

会社全体との大きなチャレンジとなるから、大成功に越したことはないが、失敗せずに“順当に売れればよし”と考えることもできる。そういう意味では、大きなリコールも発生せず、これまでの人気をキープできているから、及第点はクリアしていると言えるだろう。

実際のところ、DNGA第2弾モデルとなるコンパクトSUVの「ロッキー」は、トヨタへOEM供給された「ライズ」が大ヒットした。

DNGA第2弾として登場した「ロッキー」(写真:ダイハツ)

なんと2020年1~6月に最も売れた乗用車(軽自動車を除く)となったのだ。DNGAによるクルマ作りの実力は、第2弾モデルでしっかりと証明されている。

軽自動車マーケットで巨大な存在となったN-BOXを凌駕することは叶わなかった。しかし、DNGAという新しい方法を問題なく機能させ、販売面でこれまでの地位をしっかりと守ったという意味で、現行タントは“まずまずの成績だった”と言えるのではないだろうか。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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