何よりも、このような不毛なメンツの戦いの中で最も割りを食うのは、特産品開発の委員会や第3セクターなどの組織で働くスタッフたちです。仕事をしようにも、役員クラスはバラバラに参加している団体や企業が互いに罵り合う一方、スタッフたちも出身母体がそれぞれ異なる出向者であったりします。また採用条件なども違ったりするわけですから、働きにくいことこのうえないわけです。
その結果、どうなるのか。心あるスタッフは徐々に離れていくことになり、立て直しはますます困難になります。そして、その地元から離れる人すらでてきます。これでは地域振興のために始まったはずの特産品開発が、むしろ地域の財政負担を拡大し、さらに有能な人材すら流出させる原因になってしまうのです。
全国を見渡せば、長野県の小布施町や高知県の四万十町の栗加工品、同県の馬路(うまじ)村や徳島県の旧木頭村のゆず製品など、各地でその地域の良さが発揮され、全国区で高い評価を受け続け、成長する特産品も多く存在しています。
稼いで地域に奉仕する民間企業に学べ
そもそも、ご当地のお土産として定着している商品は民間企業の商品が多いのです。例えば札幌市の石屋製菓の「白い恋人」は、北海道土産の定番中の定番です。「もう飽きた」という人も少なくないかもしれませんが、コロナ禍で観光客減の苦しいなかでも、同社は病院勤務者などのエッセンシャルワーカーなどに商品を配布するなど、地道な社会貢献にも努めています。
また、今や博多名物となった辛子明太子を作ったふくやもこうした企業の1つです。自ら辛子明太子を開発したにもかかわらず、その作り方を地域全体に広めた同社は、今も地元のさまざまな企画の協賛なども務め、勢いある福岡を支える地場企業の一つとして多くの人が尊敬してやまない企業になっています。これらの企業には「税金を使う」などという発想はありません。
しっかりとした経営者が、社員と共に地域に貢献する姿勢を持つ。だからこそしっかりとした商品が作られ続けるのです。地方はいいかげん、特産品作りを税金のネタとして使って消耗したり、地元で揉めごとの種にするのを、まずはやめなくてはなりません。
冒頭のように、地域内でワインをめぐって揉めるエネルギーがあるのなら、もっと外に向けてエネルギーを使ってほしいのです。向かうべきは内なのか外なのか。地域活性化では「この差」があらゆるプロジェクトの成否を分けています。
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