医学部人気「20年後も続く」保証ない深い事情

AI時代の到来で医師のステータスも変わるか

AIに何もかも任せてはいけないその他の理由の1つは、新型コロナウイルスのような、データベース上に存在しないまったく新しい病気や疾患概念が突然登場することもあるからです。参照すべきデータがなく、1からすべてを行わなくてはいけないものへの対処を現在のAIは得意としていません。

問題は、「医療を作り出す人」はある種のクリエーティブな能力を持った人が務めるべきで、医師の中でそういう人は必ずしも多くないと思われることです。その手の資質に長けていない多数派の医師は「寄り添う人」の専門性を高めていかなくてはいけません。

つまり、生身の人間だけが持つ「温かみ」「親身さ」「やさしさ」などを武器に、AIの出した診断をオブラートにくるんで患者さんに説明したり、あるいは患者さんのさまざまな悩みの相談に乗ってあげたりすることで患者さんの不安解消に努め、医療の効果を最大化する、カウンセラー的な役割に特化して進化していく必要があるのです。「寄り添う」新しい文化を創造していかなくてはいけないのです。

医師に「患者に寄り添う」スキルはある?

実のところ心配なのは、「寄り添う」ということは簡単ではなく、なかなかできない医師がいるかもしれないということです。

喜ばしからざることですが、医師という職に就いている人には、企業に勤めた経験のある人なら必ず叩き込まれているようなビジネスマナーやエチケットを教えてもらえないまま中年になってしまっている例が多々あります。一般に、社会的に成熟していない人たちが多いのです。私とて、その例外であると思いあがっているわけではありません。

先輩後輩の上下関係の中で働いている医局時代はまだしも、そこを卒業してしまうと他人から怒られるという経験がほとんどなくなってしまいますし、開業して一国一城の主になったら、その傾向はより顕著です。そういう医師が今さら急に「患者さんに寄り添ってください」と言われても対応は難しい場合も多いでしょう。

少なくともあと10~20年は、コミュニケーション能力が磨かれていなくても、「ほどほどの専門性」さえあれば医師として食べていくことはできるでしょうが、それ以降は「おちこぼれ」になってしまう医師が相当な割合で出るものと予想されます。

そうならないように、ある時期からは医学部入試の選抜方法を大幅に変えたり、医学教育プロセスを見直したりして、医者の人数そのものを相当絞り込む必要も出てくるかもしれません。質についても量についても考えていく必要があるのです。

ところで、医学部の人気は近年過熱気味です。国公立医学部の中では受験難易度のレベルが下のほうの大学でも、東京大学の理科一類に匹敵するほどの難易度に上がっています。

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