グーグル検索は「独占」、米国政府が暴いた全容 アップルに年間1兆円支払い、検索シェア拡大

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司法省の訴状は、こうした排他的な協定が「われわれの検索やアシスタントの利用を持続させるための保険証書のようなものだ」というグーグル社内での言葉を引用。そのうえで、グーグルが長年にわたってさまざまな利害関係者と排他的協定を保持してきたことで、競合サービスの成長が阻まれたと結論づけた。また広告主にとっても、検索広告の出稿料がつり上げられるだけの力がグーグルにあったと述べている。

グーグルは「訴訟には著しい欠陥」と反論

対するグーグルも黙ってはいない。最高法務責任者を務めるケント・ウォーカー上級副社長は提訴発表直後の声明で、「司法省の訴訟には著しい欠陥があり、独禁法に関する曖昧な論拠に頼っている。ユーザーがグーグルを使うのは強制されたり、代替が見つからないからではなく、自ら選んでいるから」と反論した。

ウォーカー氏は一連の排他的協定について、通常のビジネスと同様に「自社サービスを宣伝するのにお金を払っている」としたうえで、スマホのホーム画面をスーパーマーケットの棚に例え、自社商品、つまり検索サービスがよい棚を取れるようにスマホメーカーや通信キャリアなどと協定の交渉をしていると述べた。

ただ、排他的協定の中身には一切触れられておらず、細かな点は法廷で争われることになりそうだ。アンドロイドに関しては「キャリアやメーカーとの協定がアンドロイドの無料提供を可能にし、スマホの価格を下げている」(ウォーカー氏)と、消費者の便益につながっているとした。スマホ上でグーグル検索を目立たせることが検索広告の収入につながり、それによってアンドロイドの開発費を賄っていることの示唆だろう。

司法省に対するグーグルの反論声明では、アップルのブラウザー「サファリ」においてグーグルだけでなく、ヤフーやビング(マイクロソフト)も目立つ場所に表示されるようにお金を支払っていると強調(画像:Google)

最も強調したのは「ユーザーが望めばわれわれの競合サービスもすぐに使える」ということだ。アップルのサファリでは複数の検索エンジンが選択肢として出てくる。それは設定から簡単に変えられる。アンドロイドでは競合のアプリやアプリストアがプリインストールされていることも少なくない。競合の検索アプリのダウンロードはこんなに早く完了する――。ウォーカー氏はそんな主張を続けた。

独禁法の訴訟では、独占企業が消費者の利益を阻害したかどうかも焦点になる。グーグルは支配的地位を利用して、消費者がグーグル検索を使わざるをえない状況に追い込んだのか。たとえグーグル検索がデフォルトに設定されていても、消費者にはそれを変更する選択肢がある。ウォーカー氏が強調したかったのはこの点だろう。ただ実際に消費者が検索エンジンを変更するかどうかは別の話だ。

今回司法省は1990年代に提訴したマイクロソフトの例を引き合いに出している。だがウインドウズに無償で付属しているインターネットエクスプローラーを使いたくない場合、当時は有料で代替品を買わなければならないなど、ほかのブラウザーを選択するハードルが高かった。その点で事情は異なる。

グーグル検索は無料で使えるが、司法省が訴状で「検索結果と引き換えに個人情報と興味関心の情報を提供する。グーグルは広告を販売することで消費者の情報を収益化する」と説明しているように、消費者はお金の代わりにデータで支払っているといえる。実際にやっている人は多くないが、データの提供は拒否することもできる。

司法省はグーグルの独占が消費者にもたらした害として、プライバシーやデータ保護、消費者データの利用の仕方も含めた検索エンジンの品質低下、検索エンジンの選択肢の縮小、イノベーションの阻害を挙げた。

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