世界遺産の観光に「高速バス」が便利な理由

全国に広がる乗り換えなしの「直行便」路線網

高野山へは、京都便とまったく同じ時期に関西空港からの直通バスも走行しているし、高野山から途中の護摩壇山での乗り換えを挟んで、「紀伊山地の霊場と参詣道」の中心的な資産ともいえる熊野本宮大社を結ぶ路線バスもある。鉄道を使わなくても世界遺産の周遊ができるほど、バス路線の整備が進んでいるのだ。

また、高速バスではないが、奈良県の近鉄八木駅から十津川村、熊野本宮を経て、世界遺産の「新宮速玉大社」がある和歌山県新宮市までを結ぶ奈良交通の「八木新宮特急バス」は、一般道だけを走る路線バスの日本最長路線として、よくメディアにも取り上げられている。

世界遺産直行バスの老舗「石見銀山号」

こうした世界遺産への直行高速バスの嚆矢(こうし)のひとつが、広島駅と世界遺産「石見銀山とその文化的景観」の中心、大田市大森地区を結ぶ「石見銀山号」である。

バスは石見銀山の先、大田市のバスターミナルまで運行されており、1日2往復。午前便は広島駅を10時に出発するが、これは東海道新幹線の東京駅始発となる「のぞみ1号」(東京駅発6時00分、広島駅着9時49分)に接続する。

2007年に世界遺産登録された「石見銀山遺跡とその文化的景観」(写真:tenjou/PIXTA)

東京から石見銀山へは、羽田から出雲空港まで航空機を使えば一気に近くまで行けるが、出雲空港から公共交通を使おうとすると、バスでJR出雲市駅へ出て山陰線に乗り換え、大田市駅から石見銀山まで再び路線バスに乗り換える必要があるため、出雲空港行きの初便に乗っても、石見銀山到着は昼前後になる。乗り換えの少ない広島からの高速バスは、使い勝手のいい路線なのだ。

石見銀山の世界遺産登録は2007年だが、登録の機運が盛り上がり注目されるようになった頃から、JR中国バスが広島から銀山への運行を始め、それが現在の石見銀山号(石見交通とイワミツアーの共同運行)に引き継がれている。

高速バスによるアクセスが重要な足となっているもう1つの世界遺産は、岐阜県の白川郷である。

白川郷では「合掌造り集落」が世界遺産登録されている(筆者撮影)

冬は雪に閉ざされ、秘境とも言われる荻町の合掌造り集落が富山県側の五箇山とともに世界遺産に登録されたことで、すぐ近くを東海北陸道のインターチェンジができ、それにともなって名古屋から直行の高速バスが運行されるように。現在1日8便が往復している。

筆者も昨年(2019年)白川郷を訪れた際には、名古屋からの高速バスを利用した。所要およそ2時間40分、運賃は片道4000円である。新型コロナウイルス流行前だったので、バス内にも外国人の姿が多かった。

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