北海道「100年続く路線廃線」で考える街の再生 日高本線は来年4月に廃線になることで合意

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一方で高速道路をはじめとする高規格幹線道路の建設は拡大の一途。JR北海道発足当時の1987年(昭和62年)にわずか167㌔だったのが、2016年(平成28年)には1093㌔に延びている。

その結果、旧国鉄時代に4000キロあった北海道内の鉄道営業距離は、2020年5月現在、2488㌔にまで減少した。約4割の大幅減である。今後も、輸送密度の低い路線はバスに転換されていく可能性が高い。

JR北海道の経営実態や体力を考えれば、すべての路線を維持していくのは困難だろう。しかし、明治以来100年以上も続いた鉄路をいったん廃線にしたら、もはや元には戻らない。

厳しい冬を乗り切るために生み出されてきた耐寒、耐雪をはじめとする北の鉄道ならではの技術改革や保守点検・整備技術の蓄積は貴重な財産だ。廃線で現場から技術者が離れていくデメリットは大きいだろう。農産物や海産物、酪農品の主要輸送手段だった歴史、地域の中核的な公共交通機関だった歴史も過去のものとなってしまう。

活用の可能性は本当にないのか

本当に活用の可能性はないのか。北海道は日本を代表する観光資源の宝庫であり、広大な土地がある。こうした資源と鉄道を組み合わせた、鉄路再生計画は考えられないものか。今年8月には、JR北海道が東急の車両を使った豪華周遊列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」(2人1室利用で1人68万円から)の運行を実施した。

富裕層相手の超豪華版だけでなく、一般観光客が利用できるようなプランがあってもいいし、輸送密度の低い線区を中心に走るコースがあってもいいのではないだろうか。

さらに言えば、廃線は鉄道事業者だけの問題だけではない。北海道や地域の自治体の問題も大きい。かつては駅が街の中心だったが、現在は駅前は廃れ、ショッピングモールや飲食店などが集まる郊外の幹線道路沿いが賑やかになっている地域が多い。

これは全国的な傾向であり、駅周辺に魅力が乏しいために人が利用しないのだろう。鉄路を残すためには街づくりを根本的に考え直さなくてはならない。

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