SDGsを経営に練り込むことは、要はどんな商売がしたいのかに直結します。サステイナビリティに配慮すれば多くの場合コスト高になる。そこで、安かろう悪かろうで大量に売れるものを出したいのか、サプライチェーンや環境に配慮したうえで高品質なものを高く売るのか。
例えばアウトドア用品のパタゴニア。サステイナビリティを全製品で追求して値段も高い。そういう市場を取りに行っている。さらにその上には高級ブランドのエルメスがあります。エルメスって使う皮1枚1枚、環境や人権配慮を徹底的に追求しています。そしてエルメスの値段で買える人しか相手にしていない。
「子供の権利」に配慮しているイケア
──それぞれの戦略でSDGsが利益構造に組み込まれている。
一方、サステイナビリティを核に据えつつ、安く提供しているのがイケア。イケアの根本思想は子供の権利を守ること。商品デザインから製造、物流、販売と一気通貫で子供の権利に配慮しているんです。でもそれをあえてブランディングしない。成長の理由を問われれば、子供の権利を守ってきたから、と答えるだけ。
イケアは1つひとつの製品について二酸化炭素排出量とか徹底的に量り、それでいて安いから成功している。ユニクロもここへ来て、世界中の委託工場で不当に安い賃金や長時間労働がないか、消防設備は整備されているかなど監査を徹底するようになった。でも安いままだから売れているし、国際的に信頼を得てきているのかなと思います。
──思考法の1つに、「アウトサイド・イン」が出てきます。
現在の自社事業を起点に考える「インサイド・アウト」に対し、社会の要請を起点とするのが「アウトサイド・イン」。明日はここまで、とコツコツ積み上げる発想ではなく、30年後、あの山頂に到達するために明日はどんな1歩を繰り出すか。日本人はあまり慣れていない考え方かもしれません。
──そこの部分で、ヤマト運輸の高齢者見守りサービスの例を引かれてました。社会の要請をくんでいる、でも「新しい経営理論が生まれない」と書かれていますが?
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