変貌する日本政治 90年代以後「変革の時代」を読みとく 御厨貴編 ~変転した日本政治20年にさまざまな問いかけ
冷戦が終わり、グローバル化が進んだ1990年代は、日本にとってさまざまな意味で大きな転換期だった。残念ながら、少子高齢化社会の到来やバブル崩壊からデフレと低成長へといったややネガティブな見方が多いようである。さて、政治的にはどうなのだろうか。
90年代には、自民党の分裂と下野、細川政権の成立と崩壊、自社さ連立から一転して自自、さらには自公連立へと政権の構成自体がめまぐるしく変転した。中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へと切り替わり、政党助成制度も導入された。地方分権化が進められ、政治主導が強く主張されるようになり、橋本行革も行われた。
これだけたくさんのことが起こったためか、90年代以後の政治がどのようなものだったのかという問いへの簡潔な答えは、なかなか難しい。
「55年体制」と呼ばれた自民党一党優位体制のゆっくりとした崩壊過程、という表現は可能だろうが、ではそれが何を意味するのか、再び疑問はわいてくる。
本書は、いわゆるオーラル・ヒストリーの第一人者である御厨氏が、若手研究者を組織して果敢にその解明に取り組んだものである。一つの特徴は、一風変わったさまざまなテーマが含まれていることで、公明党と創価学会、大臣や官僚の更迭、投票行動と「バブル」との相関、などはかなり目新しい。
他方、データ・統計を駆使しながら自民党政治の自壊構造とそのプロセスを分析した菅原論文と、地方分権化の中での自民党県連の変化や党執行部との関係の構図を論じた砂原論文などは、研究論文としても水準が高いと言えるだろう。