「核のごみ」問題、北海道で起きる深刻シナリオ 寿都町、神恵内村が最終処分場の調査に応募

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吉野氏はこれまで市民活動とは無縁だったというが、今後、町内の反対団体と歩調を合わせて反対運動を加速させるという。「来年の町長選挙で反対派の候補を立てるか、住民投票を求めていくか。町の分断を覚悟でリコール(町長の解職請求)をかけていくか。あらゆることで反対の輪を広げていきたい」(吉野氏)。

いま注目を集めている日本学術会議は、内閣府の旧原子力委員会から審議依頼を受け、2012年と2015年に高レベル放射性廃棄物の処分法や処分場の決め方などについて具体的な提言を出した。その中には、「核のごみ問題国民会議」など中立的な組織の設置も盛りこまれているが、政府はこの提言を黙殺したままだ。

「学術会議の提言を政府が尊重しなければ、それこそ学術会議を置いている意味がない」と話すのは、元原子力委員会委員長代理で長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長の鈴木達治郎教授だ。

日本では公平な議論ができない

鈴木教授は「処分場の議論を進めること=原子力政策を推進すること」という構図になっていると指摘したうえで、「どこの国も、原発推進でも反対でも処分場は必要との認識が進んでいる。ところが日本では、処分場の問題と原子力政策がリンクしているので、廃棄物の処分計画を認めることが原子力政策を認めることになってしまう。これでは脱原発派の人々は絶対に賛成しない」と話す。

NUMOの定款には、「原子力発電に係る環境の整備を図る」と書かれている。政府の基本方針では、NUMOは「国民の理解の増進」を図る組織とされるが、法律上、原発推進組織に位置づけられている。欧米では処分事業の推進組織の活動をチェックする独立の第三者機関が設けられている。今後、日本でも学術会議が提言するような「核のごみ問題国民会議」のような第三者機関が必要になるだろう。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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