「核のごみ」問題、北海道で起きる深刻シナリオ 寿都町、神恵内村が最終処分場の調査に応募

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文献調査に応じれば、寿都町と神恵内村にはそれぞれ20億円が交付される。2年後にボーリング調査などを伴う概要調査に進めば、さらに70億円を受け取ることができる。概要調査に進むには、道知事の同意が必要だが、北海道の鈴木直道知事は「概要調査には同意しない」と明言している。

電力業界では「道外で本命の自治体がある」(電力会社社員)とささやかれているが、原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「北海道東部や東北の2地域を適地とする学者もいる。これまで怖くて声を出せなかった自治体が、寿都町などが手を挙げたことで一気に動き出すかもしれない」と話す。

文献調査の正体は住民の懐柔

今回、にわかに注目を集める文献調査だが、文字通りの机上での資料調査は東京のNUMO本部で行われる。では、北海道では何が行われるのか。西尾氏は、「地元住民の懐柔が文献調査の正体だ」と指摘する。

NUMOの資料には「文献調査の段階から、地域の皆さまに開かれた『対話の場』を設置します」と記されている。「事務所をどこに何カ所つくるのか、これから検討する」(NUMO広報室)というが、数名の職員を現地に常駐させ、住民との対話活動を活発化させるようだ。

「いままでは地元の議員や有力者に会うことは秘密裏に行ってきたが、これからは活動を全国に堂々と発信できる。(文献調査入りは)NUMOにとってメリットは非常に大きい」(西尾氏)のだ。

一方、地元の反対派はNUMOの動きに神経をとがらせている。寿都町内で水産加工業を営む吉野寿彦氏は「町長は『肌感覚で賛成が多い』と言って応募を決めてしまったが、自分の肌感覚では8割が反対している。地場の水産品の価値を高めるため、僕らは一生懸命仕事を続けてきた。町長はそうした努力を踏みにじった」と指摘する。

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