国が定めた医療行為以外の治療法の中に、より有効なものがあるとすると、公的医療保険の下ではそうした治療法は受けられない。その意味でいうと、公的医療保険は受診者が選択できる治療法の幅を狭めているという面はある。
しかし、不妊治療はどの治療法が有効かが必ずしも自明でない。治療内容の選択も価格も医師が自由に決めてよいということになると、受診者からみれば何が標準的な治療法なのか、お墨付きが与えられた形で見極めることができない。
ましてや、同じ治療法でも受診する医療機関によって値段が異なることさえある。不妊治療では、保険適用されていないことによって、そうしたことが起きている。
助成額拡大ではメリットは少ない
不妊治療に対する国の助成は現在、夫婦合算で年収730万円未満の人にしか助成されない。また、概観すると、初回の助成額は30万円で、あとは1回の治療につき15万円が給付される。2020年度予算では151億円を計上している。
もしここで各回の助成額を増やせば、一見すると受診者は助かるかもしれない。しかし、自由診療であるがゆえに医師が決める価格を引き上げれば、助成額は増えても受診者の自己負担はそれほど減らないかもしれない。そうなっては、助成を拡充しても不妊治療の受診者のメリットは少ない。
むしろ、早期に保険適用を拡大することで問題は解消に向かうだろう。保険適用されるには、治療内容の標準化と価格の公定が不可欠である。政府内には専門家が診療報酬単価を検討する会議体があり、医学界の知見を反映する形で不妊治療の治療内容の標準化を実現できる。
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