ユーロの信認を揺さぶるギリシャ危機の行方
GDPの規模でユーロ圏の2・5%にすぎないギリシャ。小国の財政危機がユーロ全体の信認を揺さぶっている。それは同国の危機が引き金となり、見過ごされてきた単一通貨ユーロの抱える構造問題が一気に噴出したともいえる。
発端は、昨年10月のギリシャでの政権交代直後、前政権による財政赤字の「粉飾」が発覚したことだった。国立病院の未払い金に計上漏れがあったとして、2009年の財政赤字見通しが対GDP比で当初の3・7%から12・5%へ大きく修正された。もともと同国は、ユーロ加盟16カ国の中でも「札付きの問題国」。1999年のユーロ発足時には加盟条件を満たせず、遅れて01年に加盟した。だが、その際に提出した財政収支のデータを04年になって大幅に訂正。実は加盟基準を満たしていなかったことが判明している。
「またか!」。ギリシャ政府に対する市場の不信感は頂点に達し、昨年12月に格付け会社が相次ぎギリシャ国債を格下げした。結果、4%台だった国債利回りは7%台まで高騰。日本の最大投信「グロソブ」が保有分を全額売却したのもその頃だ。
加盟国の不始末は当然、ユーロの信認低下を招く。ユーロ圏では「安定成長協定」で財政規律の基準(対GDP比の単年度財政赤字で3%、政府債務残高で60%)を設けているが統計が当てにならず、監視の目も緩いようでは、単なるお題目と見なされてしまう。
「ユーロ圏では通貨と金融政策は統一されたが、主権や財政運営はバラバラ。制度や文化も違う。不均衡は為替以外で調整するしかないが、収斂するどころか格差が拡大してきたのが実態だ」(中村政嗣・みずほ総合研究所シニアエコノミスト)。